フランク・ジャクソン

フランク・キャメロン・ジャクソン

フランク・キャメロン・ジャクソン（Frank Cameron Jackson、1943年 - ）は、現代哲学において重要な人物の一人です。彼はオーストラリアを代表する哲学者であり、特に心の哲学、認識論、形而上学、メタ倫理学といった分野で顕著な業績を残しています。2008年時点では、プリンストン大学、ラトローブ大学、オーストラリア国立大学という、名だたる3つの大学で教授職を兼任していました。

生い立ちと学歴

1943年、ジャクソンは哲学者アラン・キャメロン・ジャクソンの息子として生まれました。彼の父アランは、哲学者ヴィトゲンシュタインの教えを受けた人物でもあります。フランクはメルボルン大学で数学と哲学を学び、その後ラトローブ大学で哲学の博士号を取得しました。1967年にはアデレード大学で講師として教鞭を執り、1978年にはモナシュ大学哲学部門の主任教授に就任しました。

キャリア

1986年、ジャクソンはオーストラリア国立大学の教授に就任し、哲学プログラムおよび社会科学研究課程の代表も務めました。1995年には、卓越した哲学者のみが招待される名誉あるジョンロック講義の講演者に選ばれました。特筆すべきは、彼の父アランも1957年と1958年に同講義の講演者を務めており、親子二代でこの栄誉に浴したのは史上初の事例です。1998年から2001年まで、オーストラリア国立大学先端研究所のディレクターを務めました。2006年には、哲学分野における精力的な研究活動と、マネジメント面での貢献が認められ、オーストラリアで最も権威のある勲章「オーダー・オブ・オーストラリア」を英国女王から授与されました。

研究内容

ジャクソンの研究領域は非常に多岐にわたり、特定分野に限定することは困難です。しかし、中心となる分野は、心の哲学、認識論、形而上学、メタ倫理学です。特に心の哲学における彼の貢献は大きく、1982年に発表された論文「随伴現象的クオリア (Epiphenomenal Qualia)」は、哲学界に大きな影響を与えました。

マリーの部屋

この論文でジャクソンは、「マリーの部屋 (Mary's Room)」という思考実験を提唱しました。これは、色を知覚したことのない科学者マリーが、色に関する全ての物理的事実を知っていたとしても、実際に色を体験した時に新たな知識を得る、というものです。この思考実験は、物理主義、つまり世界の全ては物理的な事柄で説明できるという考え方に対する重要な反論として提示されました。マリーの部屋は、クオリア（主観的な経験の質）の存在を示唆し、意識の理解における物理主義の限界を指摘するものとして、現在でも広く議論されています。

主な著作

ジャクソンは数多くの論文や著書を発表しており、以下はその一部です。

(1975) "Grue", Journal of Philosophy
(1977) Perception: A Representative Theory, Cambridge University Press.
(1982a) "Epiphenomenal Qualia", Philosophical Quarterly
(1986) "What Mary didn't Know", Journal of Philosophy
(1987) Conditionals, Basil Blackwell.
(1996) The Philosophy of Mind and Cognition, Basil Blackwell (with David Braddon-Mitchell).
(1997) From Metaphysics to Ethics: A Defense of Conceptual Analysis, Oxford University Press.
(1998b) Mind, Method, and Conditionals: Selected Essays, Routledge.
* (2001) "Conceptual Analysis and Reductive Explanation", Philosophical Review (with David J. Chalmers).


フランク・キャメロン・ジャクソンは、現代哲学の重要な議論を牽引し、意識や知識の本質について深く考察する上で欠かせない哲学者の一人と言えるでしょう。

もう一度検索