フランク・S・ベッソン・ジュニア大将級兵站支援艦

フランク・S・ベッソン級兵站支援艦

フランク・S・ベッソン級兵站支援艦 (LSV) は、アメリカ陸軍輸送科が運用する、同軍が保有する艦艇の中で最大規模を誇る兵站支援艦です。本級は、揚陸後方支援 (LOTS) や、比較的安全な地域における兵站活動に投入されることを想定して建造されました。

建造の経緯

アメリカ陸軍は、老朽化した揚陸舟艇の更新を目的として、当初は小型の揚陸舟艇24隻の建造を計画していました。しかし、大型兵站支援艦の運用実績を踏まえた検討の結果、より大型で輸送能力の高い艦艇を導入することになりました。

最初の建造計画では、1985年に4隻の建造が発注されましたが、入札内容の不備によりキャンセル。その後、1986年に改めて4隻の発注が行われました。この変更は、先行艦の成功と陸軍が保有する貨物船の老朽化への対応策として行われたと考えられます。

設計

本級の設計は、オーストラリアのRO-RO船「フランセス・ベイ」をベースにしています。民間の商船基準を満たす設計となっており、艦首と艦尾の両方にランプウェイを備えているのが特徴です。この設計により、効率的な車両や物資の積み込み、積み下ろしを可能にしています。

艦首のランプウェイは長さ15.2メートル、艦尾のランプウェイは長さ4.87メートルで、どちらも幅8.23メートルあります。勾配1:30の海岸にも接岸でき、車両甲板は975平方メートルもの面積を有します。搭載能力は816～1815メートルトンと幅広く、M1エイブラムス戦車15両程度を搭載可能です。コンテナ搭載能力は48TEUです。

2001年から2003年にかけて建造された7番艦と8番艦は、全長を12メートル延長した発展型です。搭載量は2000メートルトンに増加し、コンテナ搭載能力は50TEU、主力戦車24両の搭載が可能になりました。また、艦首にはランプウェイに加え観音開きの門扉が設置され、ランプウェイは23.16×5.49メートルの分節式に変更されています。

フィリピンへの輸出

1992年には、アメリカ合衆国による軍事援助の一環として、フィリピン海軍向けに本級をベースとしたバコロド・シティ級2隻が建造されました。基本設計は本級と同様ですが、艦尾のランプウェイの代わりにヘリコプター甲板が設置され、150名の兵員居住区も備えています。

まとめ

フランク・S・ベッソン級兵站支援艦は、アメリカ陸軍の兵站能力を向上させる上で重要な役割を担う艦艇です。その設計や建造経緯、そしてフィリピンへの輸出などを通して、多様なニーズに対応できる汎用性の高さを示しています。将来的な運用や、さらなる発展型が登場する可能性も期待されます。

参考文献

Couhat, Jean Labayle (1986), Combat Fleets of the World 1986-87, Arms & Armour Press, ISBN 978-0853688600
Killblane, Richard E. (2019), Delivering Victory: The History of U.S. Military Transportation, Emerald Group Publishing, ISBN 9781787546110
Pagonis, W.G.『山・動く―湾岸戦争に学ぶ経営戦略』佐々淳行 (監修)、同文書院インターナショナル、1992年。ISBN 978-4810380033。
Saunders, Stephen (2009), Jane's Fighting Ships 2009-2010, Janes Information Group, ISBN 978-0710628886
Wertheim, Eric (2013), The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World (16th ed.), Naval Institute Press, ISBN 978-1591149545
吉富望「LSVとLCUの導入 新たな「海上輸送部隊」の青写真」『世界の艦船』第897号、海人社、108-111頁、2019年4月。 NAID 40021819691。

もう一度検索