フランシス・クーパー (第7代クーパー伯爵)

第7代クーパー伯爵フランシス・トーマス・ド・グレイ・クーパー

フランシス・トーマス・ド・グレイ・クーパー（Francis Thomas de Grey Cowper）は、1834年6月11日に生を受け、1905年7月18日に71歳でその生涯を終えた、イギリスの著名な貴族であり自由党所属の政治家でした。父は第6代クーパー伯爵ジョージ・クーパー、母は第7代ルーカス女男爵アン・フロレンス・ド・グレイ（第2代ド・グレイ伯爵トーマス・ド・グレイの娘）です。父の死まで、彼は「フォーディッチ子爵」の儀礼称号を称しました。

若年期とキャリアの始まり

クーパーは名門ハーロー校で学び、その後オックスフォード大学に進学しました。学業を終えた後、1852年にはヨークシャー軽騎兵連隊付の少尉として軍務に就きました。1855年には、父によってケント州の副統監に任じられ、地方行政における役割も担いました。

1856年に父ジョージが死去すると、彼はクーパー伯爵の爵位を継承し、これにより貴族院議員となりました。以後、彼は政界での活動を本格化させ、自由党の政治家として歩みを進めます。1861年からはベドフォードシャー州統監を死没するまで長年にわたり務め、地域の重要人物として尊敬を集めました。

政界での活躍

クーパー伯爵は、ウィリアム・グラッドストン率いる自由党政権下で重要な役職を歴任しました。1871年には、グラッドストン内閣において儀仗衛士隊隊長に任命されるとともに、貴族院の与党院内幹事も兼任し、政府の貴族院における運営に深く関わりました。同年には枢密顧問官にも任じられ、国家の意思決定プロセスにおいても影響力を持つ存在となりました。

彼のキャリアにおける特筆すべき期間は、第2次グラッドストン内閣下の1880年から1882年にかけてアイルランド総督を務めたことです。当時のアイルランドは複雑な政治情勢にありましたが、クーパー伯爵はこの困難な職務を遂行しました。その功績を認められ、1865年にはイギリスの最高勲章の一つであるガーター勲章を授与されています。

保持した複数の爵位

クーパー伯爵は、クーパー伯爵位以外にも複数の爵位を保持しました。彼は自身がオーモンド・オソーリィ伯爵バトラー家の女系子孫であることを根拠に、バトラー家がかつて保持していたバトラー男爵およびディンゴール卿の爵位回復を請願しました。その結果、1871年に以下の爵位が承認され、彼に与えられました。

第3代ハートフォード州ムーアパークの,ムーアパークのバトラー男爵（イングランド貴族爵位）
第4代ディンゴール卿（スコットランド貴族爵位）

さらに、1880年に母が亡くなった際には、母が保持していたイングランド貴族爵位である以下の爵位も相続しました。

* 第8代ウィルトシャー州クラッドウェルのクラッドウェルのルーカス男爵

これにより、クーパー伯爵は複数の由緒ある爵位を一身に集めることとなりました。

家族と爵位の行方

1870年10月25日、クーパー伯爵は第4代ノーサンプトン侯爵ウィリアム・コンプトンの娘であるカトリーン・セシリア・コンプトンと結婚しました。しかし、夫妻の間には子どもが誕生しませんでした。

このため、1905年にクーパー伯爵が亡くなった後、彼の保持していた主要な爵位の多くはその身で途絶えました。クーパー伯爵位とその従属爵位であるフォーディッチ子爵位、ケント州ウィンガムのクーパー男爵位、そして神聖ローマ帝国貴族爵位であるナッソー・ドーヴァーカーク侯爵位は廃絶となりました。バトラー男爵位については、後継となる姉妹間で優劣を定めることが困難であったため、停止（Abeyant）状態となりました。

一方、ディンゴール卿位とルーカス男爵位は、遠縁にあたるオベロン・ハーバートへの継承が認められ、1907年にその権利が確定しました。このように、子がいなかったクーパー伯爵の死は、彼が保持していた多くの爵位の歴史における重要な転換点となりました。

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