フランシス・ハ

『フランシス・ハ』（Frances Ha）は、2012年に製作されたアメリカ合衆国の映画です。数々の人間ドラマを手掛けるノア・バームバックが監督を務め、主演のグレタ・ガーウィグと共に脚本も担当しました。全編モノクロームで撮影されており、ニューヨークを舞台に、等身大の女性の揺れ動く心情と成長を描き出した作品として評価されています。

物語の主人公は、ニューヨークでプロのダンサーになることを夢見ながらも、なかなか芽が出ずにいる20代後半の女性、フランシス（グレタ・ガーウィグ）です。彼女の生活の中心には、長年ルームシェアをし、深い友情で結ばれた親友のソフィー（ミッキー・サムナー）の存在がありました。しかし、ソフィーが恋人パッチ（パトリック・ヒューシンガー）との婚約を機に、共に暮らしたアパートを出ていくことになったことから、フランシスの日常に変化が訪れます。親友の独立を見送り、一人になったフランシスは、それまで漠然としていた自身の将来や人間関係について深く考えるようになります。

ソフィーとの物理的な距離ができるにつれて、フランシスは疎外感や孤独を感じるようになります。新たなルームメイトとの生活や、かつての友人がそれぞれの道を歩んでいく姿を見る中で、彼女は自身の置かれた状況や将来への不安に直面します。故郷であるカリフォルニア州サクラメントで両親と過ごしたクリスマス、衝動的に計画したパリへの短い旅など、様々な場所での経験を経て、フランシスは自分自身と真摯に向き合わざるを得なくなります。

ニューヨークに戻ってきたフランシスは、以前とは異なる視点で自身のキャリアと人生を見つめ直します。ダンサーとしての道に固執するのではなく、自身の持つ才能や情熱を別の形で活かす可能性に気づき始めます。そして、紆余曲折を経て、彼女は振付師として新たな一歩を踏み出すことを決意します。これは、単に職業を変えるだけでなく、他者への依存から脱却し、自身の足でしっかりと立ち、自己を確立していく過程でもありました。

本作には、主人公フランシスを演じたグレタ・ガーウィグをはじめ、ミッキー・サムナー、アダム・ドライバー、マイケル・ゼゲン、パトリック・ヒューシンガー、マヤ・カザン、ジュリエット・ライランスといったキャストが出演しています。

作品は2012年9月1日にテルライド映画祭でプレミア上映されました。その演技が高く評価されたグレタ・ガーウィグは、第71回ゴールデングローブ賞のミュージカル・コメディ部門で主演女優賞にノミネートされています。登場人物たちの自然な会話や、等身大の若者の葛藤を描くスタイルは、インディペンデント映画のジャンルであるマンブルコアとの関連でも語られることがあります。

『フランシス・ハ』は、誰もが経験する人生の過渡期、友情の変化、そして自己探求の旅を、ユーモアと感傷を交えながらリアルに描き出した作品と言えるでしょう。

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