フランシス・ロイセール

フランシス・ロイセール：スイス映画界の異才

フランシス・ロイセール（Francis Reusser、1942年1月1日 - 2020年4月10日）は、スイスの映画監督であり、写真家としてもその才能を発揮しました。彼は、1970年代のスイス映画界を牽引した「ヌーヴォー・シネマ・スイス」の重要な一翼を担い、数々の作品で観客を魅了しました。

生い立ちと初期の活動

ロイセールは、スイスのヴォー州ヴヴェで生まれました。ヴヴェ写真学校で学び、同時期には後に映画監督となるイヴ・イェルサンも在籍していました。卒業後、テレヴィジオン・スイス・ロマンド（TSR）でテレビ番組の制作に携わり、アラン・タネールやクロード・ゴレッタといった「ヌーヴォー・シネマ・スイス」の中心的メンバーたちと交流を深めました。

映画監督としてのデビュー

1968年、ロイセールはオムニバス映画『Quatre d'entre elles』の一篇『22 ans - Patricia』で映画監督としてデビューしました。この作品には、女優のパトリシア・モラーズが出演しています。翌1969年には、長編映画『Vive la mort』で監督デビューを果たしました。この作品では、前作に主演したモラーズと共同で脚本を執筆し、撮影監督には新人のレナート・ベルタを起用しました。また、同年にはアラン・タネール監督の『どうなってもシャルル』に俳優として出演するなど、多才な才能を発揮しました。

ロカルノ国際映画祭での受賞とその後

1976年、ロイセールは長編第2作『Le Grand soir』でロカルノ国際映画祭の金豹賞を受賞し、国際的に高い評価を得ました。この作品では、録音技師にリュック・イェルサンを起用しました。その後も、1980年には『Seuls』、1985年には『Derborence』など、意欲的な作品を発表し続けました。1999年には、脚本家のジャン＝クロード・カリエールと共同で脚本を手がけた『La Guerre dans le Haut Pays』を制作しました。

スイス映画界への貢献

ロイセールは、映画監督としての活動に加えて、ジュネーヴ高等視覚芸術学校（ESAV）に音響視覚学科を設立し、後進の育成にも尽力しました。彼の教え子の中には、ジャン＝リュック・ゴダールの音響を支えたフランソワ・ミュジーがいます。

日本での評価

ロイセールの作品は、スイス国内やヨーロッパの映画祭では高く評価されていますが、残念ながら日本では商業公開されていません。彼の作品が日本で公開される日が待たれます。

フィルモグラフィー（一部）

1968年: 『Quatre d'entre elles』(オムニバス) - 一篇『22 ans - Patricia』監督
1969年: 『Vive la mort』- 監督・脚本
1976年: 『Le Grand soir』- 監督 (ロカルノ国際映画祭金豹賞受賞)
1980年: 『Seuls』- 監督
1985年: 『Derborence』- 監督・編集
1999年: 『La Guerre dans le Haut Pays』- 監督・脚本

ロイセールは、その生涯を通じて、スイス映画界に多大な貢献を果たしました。彼の作品は、観る者に深い感動と問いを投げかけ、その芸術性は色褪せることなく、後世に語り継がれていくことでしょう。

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