クロード・ゴレッタ

クロード・ゴレッタ：スイス映画界の巨匠

クロード・ゴレッタ（Claude Goretta, 1929年6月23日 - 2019年2月20日）は、スイスを代表する映画監督、脚本家、そしてテレビプロデューサーです。彼は、繊細な人間描写と社会への深い洞察を組み合わせた作品で、国際的な評価を確立しました。

生い立ちと初期のキャリア

ゴレッタは、スイスのジュネーブで生まれ、ジュネーブ大学で法学を学びました。大学時代には、後に映画監督となるアラン・タネールと出会い、共に映画サークルを設立。これが彼の映画への情熱を育むきっかけとなりました。その後、彼はロンドンに渡り、英国映画協会で映画製作について学びました。

1957年、タネールとの共同監督作品である短編映画『ピカデリーの夜 Nice Time』がロカルノ国際映画祭で金豹賞を受賞し、ゴレッタは映画監督としてのキャリアを本格的にスタートさせます。この作品は、ロンドンのピカデリーサーカスのナイトライフを捉え、その後の彼の作品に繋がるテーマやスタイルを垣間見ることができます。

スイスでの活動と「グループ5」

1958年にスイスに帰国したゴレッタは、テレヴィジオン・スイス・ロマンド（TSR）で働き始め、ドキュメンタリー番組のプロデューサーとして活躍しました。1968年には、タネール、ミシェル・ステーらと共に映画製作会社「グループ5」を設立。このグループは、スイス映画の発展に大きく貢献しました。

1970年、グループ5とTSRの共同製作で、ゴレッタは長編第一作『Le Fou』を発表。この作品は、スイス的な映画として評価され、スイス批評家連盟賞を受賞しました。この頃から、彼の作品は、単純なコメディ要素と、登場人物の内面をデリケートに描く作風が特徴となり、国際的な注目を集め始めました。

国際的な評価と受賞

1973年の長編映画『招待 L'Invitation』は、第26回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞し、ゴレッタの国際的な評価を決定づけました。1977年には、『レースを編む女 La Dentellière』が第30回カンヌ国際映画祭でエキュメリック賞を受賞。この作品で主演を務めたイザベル・ユペールは、一躍スターダムへと駆け上がりました。

1983年の『マリオ・リッチの死 La Mort de Mario Ricci』では、第36回カンヌ国際映画祭で、主演のジャン・マリア・ヴォロンテが男優賞を受賞。さらに、連続テレビ映画『シムノン・アワー L'Heure Simenon』の一作、『Der Bericht des Polizisten』が1987年のモンテカルロ映画祭で賞を受賞するなど、数々の映画祭で高い評価を受けました。

その他の活動と晩年

1990年代前半には、フランス、ベルギー、スイスの放送局が合同で製作したテレビ映画『新・メグレ警視 Maigret』シリーズが、ヨーロッパで人気を博しました。ゴレッタの映画は、ルイス・ブニュエルやジャン・ルノワールといった巨匠との関連性が指摘されており、その作風は映画史の中で重要な位置を占めています。

日本では、『レースを編む女』が公開されたのみで、ゴレッタの作品はほとんど知られていません。しかし、彼はスイス映画界の巨匠として、その才能と功績は国際的に高く評価されています。晩年は、2006年の「サルトル 受難の時代」を最後に第一線から退き、2019年に89歳でジュネーブの自宅で亡くなりました。

フィルモグラフィー (抜粋)

1957年: 『ピカデリーの夜 Nice Time』（短編、共同監督アラン・タネール）
1970年: 『Le Fou』（長編第一作）
1973年: 『招待 L'Invitation』
1976年: 『レースを編む女 La Dentellière』
* 1983年: 『マリオ・リッチの死 La Mort de Mario Ricci』


ゴレッタの作品は、その繊細な人間描写と社会への深い洞察力により、今もなお多くの映画ファンを魅了し続けています。

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