フランソワ・ヴェイエルガンス

フランソワ・ヴェイエルガンス（François Weyergans, 1941年8月2日 - 2019年5月27日）は、ベルギー・ブリュッセル出身のフランス語作家、映画監督です。

生涯

1941年、ブリュッセルのエテルベークで、カトリック作家で映画評論家、出版人であった父フランツ・ヴェイエルガンスと、フランス人の母ジャンヌの間に生まれました。ブリュッセルのイエズス会系の学校を卒業後、1958年にパリの映画高等学院に入学。在学中は特にロベール・ブレッソンとジャン＝リュック・ゴダールの映画に強く影響を受けました。

1961年より、モーリス・ベジャールを題材にした作品を皮切りに映画監督としての活動を開始。その一方で、『カイエ・ド・シネマ』などに映画評論を寄稿しました。1973年には初の小説作品『道化師』を出版。この作品は、ジャック・ラカンの精神分析を受けた自身の体験に基づいたもので、ラカンの欺瞞を容赦なく暴いた作品としても評価されています。同作でロジェ・ニミエ賞を受賞しました。

その後も映画制作と並行して小説作品を発表し続け、『端役たち』（後に『フランスの男たち、女たち』と改題）でベルギー王立アカデミー・フランス語フランス文学賞、『コプト人マケール』でドゥ・マゴ文学賞、『ボクサーの錯乱』でルノードー賞を受賞。2005年には『母の家で過ごした三日間』で、同年のミシェル・ウエルベックの話題作『ある島の可能性』を抑え、ゴンクール賞を受賞しました。

2009年には、前年に亡くなったアラン・ロブ・グリエの後を継いでアカデミー・フランセーズ会員となりました。2019年5月27日、パリで死去。77歳でした。

作風と特徴

ヴェイエルガンスの作品は、人間の内面、特に精神的な葛藤や家族関係における複雑さを深く掘り下げたものが多く見られます。彼の作品には、精神分析的な視点や、自身の体験に基づいたと思われる描写がしばしば登場し、独特の文体と相まって読者を惹きつけます。映画監督としての経験も、彼の文学作品に独特の映像的な表現や、カットバックなどの映画的な手法をもたらしていると言えるでしょう。また、ユーモアや風刺を交えながら、人間の弱さや愚かさを描き出す作風も特徴的です。

主な作品

小説
1968年:『サロメ』(Salomé)
1973年:『道化師』(Le Pitre)
1981年:『コプト人マケール』(Macaire le Copte)
1983年:『メデューズ号の筏』(Le Radeau de la méduse)
1989年:『私は作家だ』(Je suis écrivain)
1992年:『ボクサーの錯乱』(La Démence du boxeur)
1997年:『フランツとフランソワ』(Franz et François)
2005年:『母の家で過ごした三日間』(Trois jours chez ma mère)
映画
1962年:『ベジャール』(Béjart)
1963年:『ヒエロニムス・ボッシュ』(Hieronymus Bosch)
1965年:『ロベール・ブレッソン：見えもせず、知られもせず』(Robert Bresson: Ni vu, ni connu)
1967年:『ボードレールは夏に死んだ』(Baudelaire is gestorven in de zomer)
1967年:『アリーヌ』(Aline)
1972年:『誰かについての映画』(Un film sur quelqu'un)
1977年:『死に至る病』(Maladie mortelle)
1977年:『愛してる、踊って』(Je t'aime, tu danses)
1978年:『肌色』(Couleur Chair)


日本語訳作品

『母の家で過ごした三日間』渋谷豊訳、白水社、2008年

参考文献

* フランソワ・ヴェイエルガンス 『母の家で過ごした三日間』渋谷豊訳、白水社、2008年（訳者解説）

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