フランソワ＝コンスタン・ジレル

フランソワ＝コンスタン・ジレルは、1873年に生まれ、1952年にその生涯を閉じたフランスの映画技師です。彼は黎明期の映画製作において極めて重要な役割を果たしました。特に、シネマトグラフの発明者として知られるルイ・リュミエールに雇われ、初期に各地へ派遣された技師の一人として活躍しました。

ジレルは、同時代の技師であるアレクサンドル・プロミオに僅かに先立ち、世界各地を巡って映画の撮影と普及に尽力しました。その活動範囲は広範にわたりましたが、中でもロシアや日本への渡航は特筆すべきものです。

彼がドイツに派遣された際のエピソードはよく知られています。移動を容易にする目的で小船を借りたジレルは、その船上からカメラを回し、目の前を流れるライン川の河岸の風景を撮影しました。この試みは、当時の観客やメディアに強い印象を与えました。リヨンで発行された新聞には、「これはまったく新しい効果を持った眺めであり、ケルンへ向かう小船から撮影されたもので、有名なライン川の河岸を壮大なパノラマとして観ることができる」と記されており、彼の革新的な撮影手法が高く評価されていたことがうかがえます。

ジレルの活動の中でも、日本の初期映画史における貢献は非常に重要です。彼は、オーギュスト・リュミエールのリヨンの理工学校時代の学友であった実業家、稲畑勝太郎との協力により、日本へシネマトグラフを導入する立役者となりました。稲畑はリュミエール社からシネマトグラフ装置2台とフィルムを購入し、日本国内での興行権を入手すると同時に、技師としてジレルを伴い、1897年に日本へ渡航しました。この渡航が、日本で初めて映画が商業的に上映される歴史的な出来事へと繋がりました。

ジレルは日本滞在中、単に上映を行うだけでなく、積極的に日本の風景や人々の暮らしをカメラに収める撮影活動も行いました。これらのフィルムは、残念ながら現像上の問題などから多くが失われてしまったとされています。しかし、リュミエール社のカタログには、ジレルが日本で撮影したとされる18本の作品がリストに掲載されており、当時の日本の様子を記録した貴重な映像が存在したことを示しています。

フランソワ＝コンスタン・ジレルの活動は、初期映画の世界的な普及に貢献し、特に日本の映画史においては、シネマトグラフの導入と初の上映、そして初期の記録映画製作という点で、忘れられない足跡を残しました。彼の技術と探求心は、世界各地に映画という新たな文化をもたらす礎となったのです。

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