フランチェスコ・モリナーリ＝プラデッリ

フランチェスコ・モリナーリ＝プラデッリ（Francesco Molinari-Pradelli、1911年 7月4日 - 1996年 8月7日）は、20世紀後半に活躍したイタリアの著名な指揮者です。とりわけイタリア・オペラの分野でその手腕を発揮し、国際的な評価を確立しました。音楽への情熱に加え、美術に関しても深い関心と造詣を持っていた多才な人物として知られています。

若き日々から研鑽を積む

1911年、イタリア北部の都市ボローニャに生を受けたモリナーリ＝プラデッリは、幼い頃から非凡な才能を示しました。地元のマルティーニ音楽院で作曲の基礎を学び、チェーザレ・ノルディオに師事。同時に、ボローニャ美術学校にも通い、ロベルト・ロンギ、フランチェスコ・アルカンジェリ、カルロ・ヴォルペといった著名な美術史家に師事して美術史の知識を深めました。その後、ローマにあるサンタ・チェチーリア国立アカデミアに進み、指揮法をベルナルディーノ・モリナーリのもとで本格的に学びました。この間も、美術への関心は冷めることなく、独学で学び続け、彼の知的な探求心は音楽と美術の両分野に及びました。

指揮者としての歩み

モリナーリ＝プラデッリの指揮者としての公式デビューは、1937年にトリエステで実現しました。翌1938年には、故郷ボローニャのコルソ劇場でガエターノ・ドニゼッティ作曲のオペラ《愛の妙薬》を指揮し、オペラ指揮者としてのキャリアを本格的にスタートさせました。彼の才能が広く認められるきっかけとなったのは、1946年の出来事です。巨匠アルトゥーロ・トスカニーニからの招聘を受け、ミラノのスカラ座の舞台に立ち、ジャコモ・プッチーニ作曲のオペラ《トスカ》を指揮しました。この成功により、彼はイタリアを代表するオペラ指揮者としての揺るぎない名声を確立しました。

国際的な舞台での活躍

スカラ座での成功を足がかりに、モリナーリ＝プラデッリは国際的な舞台へと活躍の場を広げました。1956年には、ロンドンのコヴェントガーデン王立歌劇場に客演し、当時を代表するプリマドンナであったレナータ・テバルディを主役に据えて、再びプッチーニの《トスカ》などを指揮し、大きな成功を収めました。この公演は、彼の国際的な評価を一層高めることとなりました。1957年にはサンフランシスコ歌劇場への客演でアメリカ・デビューを飾り、その後も世界各地の主要な歌劇場に招かれました。1959年にはウィーン国立歌劇場で指揮を執り、クラシック音楽の中心地でもその実力を示しました。特に、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場には1966年から1973年まで定期的に登場し、アメリカのオペラ界においても重要な存在となりました。

音楽と美術の融合

モリナーリ＝プラデッリは、指揮活動で世界中を駆け巡る傍ら、美術の世界でも活発に活動しました。彼は情熱的な美術コレクターであると同時に、美術品ディーラーとしてもビジネスを展開していました。長年にわたり収集した絵画コレクションは非常に価値が高く、1985年には故郷ボローニャで自身のコレクションを用いた展覧会を開催し、その審美眼と収集の成果を一般に公開しました。音楽と美術という二つの芸術分野で卓越した才能と情熱を示した彼の人生は、まさに芸術に捧げられたものでした。

晩年

国際的な指揮活動を精力的に続けたモリナーリ＝プラデッリですが、1983年にカターニアでプッチーニのオペラ《つばめ》を指揮したのを最後に、第一線での指揮活動からは身を引きました。その後は故郷で静かに過ごし、1996年 8月7日、85歳でボローニャ近郊のマラーノ・ディ・カステナーゾにてその波乱に満ちた生涯を閉じました。イタリア・オペラの黄金期を支え、国際的に多大な功績を残した指揮者として、彼の名前は今も音楽史に刻まれています。

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