フランチェスコ・リベッタ

フランチェスコ・リベッタ（Francesco Libetta）は、1968年10月16日にイタリアで生まれた、現代を代表するピアニストであり作曲家でもあります。彼のキャリアは作曲の分野から始まり、高名なジノ・マリヌッツィやジャック・カスタレードに師事しました。また、電子音楽と音響研究の権威であるフランスのIRCAM（イルカム）において研究員を務めた時期もあります。しかし、その後、彼の主要な活動の場は作曲からピアノ演奏へと移っていきました。

ピアニストとしての彼の業績の中で、最も広く知られているものの一つに、レオポルド・ゴドフスキーが作曲した『ショパンのエチュードによる練習曲』の全曲演奏が挙げられます。これは、フレデリック・ショパンの有名なエチュードを基に、途方もない難易度で再構成された作品集であり、これを一晩で全て演奏するという離れ業は、当時のカルロ・グランテによる水準を凌駕するとまで評され、世界中の音楽界に衝撃を与え、大きな話題となりました。この偉業により、リベッタは超絶技巧の持ち主としてその名を不動のものとしました。

ゴドフスキー作品の全曲演奏以外にも、彼のピアニストとしての活動は極めて独創的です。例えば、ピアノ学習者には必須とされるカール・ツェルニーの『50番練習曲』をコンサートでライブ演奏するという、他に類を見ないプロジェクトを行いました。これは、練習曲に秘められた音楽的な価値を改めて提示する試みとして注目されました。さらに、彼は通常のコンサートプログラムではあまり取り上げられることのない、19世紀の知られざる秘曲を積極的に演奏しています。これらの楽曲は、多くの場合、高度な演奏技術を要求されると同時に、当時の音楽様式や表現の多様性を示す貴重なレパートリーです。リベッタによるこれらの曲の発掘と演奏は、聴衆に新たな音楽的発見をもたらしています。

また、現代イタリアの作曲家であるフランコ・オッポの重要な作品である『ピアノ協奏曲第1番』の世界初演を担当するなど、現代音楽の分野においても重要な役割を果たしています。初演者として、彼は新しい音楽作品の誕生に貢献し、その普及に尽力しています。

彼のこのような幅広いレパートリー、超絶的な技巧、そしてプログラム構成における独自性は、世界中の音楽祭や主要なコンサートホールから高く評価されています。現在に至るまで、フランチェスコ・リベッタは国際的に活躍するピアニストとして、ヨーロッパ、北米、アジアなど世界各地の音楽祭に招かれ、精力的な演奏活動を展開しています。彼の演奏は、単なる技術の披露にとどまらず、楽曲への深い洞察と個性的な解釈に満ちており、聴衆を魅了し続けています。

作曲家としての初期のキャリアで培われた音楽的知識と構造への理解は、ピアニストとしての彼の演奏にも深い影響を与えていると言えるでしょう。単なる演奏家としてではなく、音楽そのものの探求者として、フランチェスコ・リベッタは常に新しい挑戦を続け、ピアノ音楽の可能性を広げています。

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