フランツ・スカルビナ

フランツ・スカルビナ（Franz Skarbina, 1849年2月24日 - 1910年5月18日）は、ドイツの画家、版画家、そしてイラストレーターとして、19世紀後半の美術界で重要な役割を果たしました。彼は、ドイツにおける印象派の先駆者の一人として知られています。

スカルビナはベルリンで生まれ、そのルーツはクロアチアのザグレブ出身の金細工職人である父親にあります。彼は1865年から1869年までベルリン美術アカデミーで美術を学びました。アカデミー卒業後、一時的にベルリンの高位軍人、セドルニツキー伯爵の娘たちの家庭教師を務めました。その後、ドレスデン、ウィーン、ヴェネツィア、ミュンヘン、ニュルンベルク、メラーノといった各地を旅し、芸術への見聞を広めました。

1877年、スカルビナはオランダ、ベルギー、フランスへと修行の旅に出ます。特にパリでの滞在は長く、この地で彼は印象派の画家たちから大きな影響を受けました。パリでは、街の風景、劇場、海岸で楽しむ人々など、印象派特有の光と影の表現を取り入れた作品を制作しました。

1878年にベルリン美術アカデミーの助教授に就任し、その後1881年にはベルリン工芸美術館の美術学校で教鞭をとりました。1882年からは再びパリに拠点を移し、翌年の1883年にはサロン・ド・パリに出展を果たしました。1885年頃には、北フランス、ベルギー、オランダを精力的に旅し、作品制作に励みました。

1888年、ベルリン美術アカデミーの教授に昇進しますが、1893年には保守的なアカデミー会長アントン・フォン・ヴェルナーと対立し、教授職を辞任します。同じ年、彼はマックス・リーバーマンと共に、保守的なベルリンの展覧会に反対する美術家グループ「Vereinigung der XI (11人協会)」に加わりました。1893年にも、北フランスとオランダへの旅行を続け、創作活動を深めます。1895年には、新しい美術を紹介する雑誌「Pan」の監修委員会のメンバーとなり、美術界の動向に積極的に関わりました。1898年には、「ベルリン分離派」の創立メンバーの一人となり、新たな美術運動を牽引しました。

また、スカルビナは、1898年からチョコレート会社経営者、ルートヴィヒ・シュトルヴェルクからの依頼で、風景画カードの応募作品の審査員をエミール・デープラーらと務めました。彼は、画家としてだけでなく、美術教育者、美術運動家としても、多岐にわたる活動を展開しました。彼の作品は、印象派の技法を取り入れつつ、独自の視点で捉えた風景や人物描写が特徴であり、ドイツ印象派の重要な担い手として、その功績は高く評価されています。

スカルビナの作品は、その生涯を通じて、変化する光の捉え方や、日常の風景に対する深い洞察を示しており、後世の芸術家たちに大きな影響を与えました。彼は、保守的な美術界に挑戦し、新たな表現を追求し続けた、革新的な芸術家として、その名を美術史に刻んでいます。

主な参考文献として、以下のものがあります。

Margrit Bröhan: Franz Skarbina. Ars Nicolai, Berlin 1995, ISBN 3-89479-057-1.
Karl-Robert Schütze: Franz Skarbina: Ein Erwachen. In: Castan's Panopticum. Ein Medium wird besichtigt, Heft 24, Berlin 2015, F3-20 f.

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