マックス・リーバーマン

マックス・リーバーマン：ドイツ印象派の巨匠

マックス・リーバーマン（1847年7月20日 - 1935年2月8日）は、19世紀後半から20世紀初頭にかけてドイツで活躍した画家であり、ベルリン分離派の創立者の一人としても知られています。彼は、ロヴィス・コリントやマックス・スレーフォークトと共に、ドイツ印象派を代表する画家として名を馳せました。

生い立ちと初期の活動

リーバーマンは、ベルリンの裕福なユダヤ人実業家の息子として生まれました。当初は法学や哲学を学んでいましたが、後に芸術の道に進むことを決意します。1869年にヴァイマル、1872年にはパリ、そして1876年にはオランダへと渡り、絵画の研鑽を積みました。これらの地での経験は、彼の芸術観に大きな影響を与えたと言えるでしょう。一時ミュンヘンに住んだ後、1884年にベルリンに戻り、その後の生涯を同地で過ごしました。

画家としての転換期

初期のリーバーマンは、田園風景や自身の身の回りの生活を描くことが多く、その作風は写実的でした。しかし、次第にフランスの印象派に影響を受け、筆致や色彩が変化していきます。彼は自身の遺産を、フランス印象派の絵画収集にも費やし、その影響を深く受けました。その後、自身の庭園や、ブルジョワジーをはじめとする富裕層の生活、肖像画などを描くようになり、ドイツの美術界や上流社会で尊敬される画家としての地位を確立していきました。

しかし、リーバーマンは新しい世代の画家、例えばゴッホなどを高く評価することはなく、ベルリンのナショナルギャラリーがゴッホの作品を購入した際には批判的な意見を表明しました。これは、彼の保守的な一面を示していると言えるかもしれません。

ベルリン分離派と芸術院での活動

1899年から1911年まで、リーバーマンはベルリン分離派を指揮しました。この分離派は、当時の美術界の保守的な姿勢に反発し、新しい美術様式を追求する芸術家たちの集まりでした。また、1920年から1932年まではプロイセン芸術院の総裁を務め、プール・ル・メリット勲章を受章、ベルリン名誉市民に推挙されるなど、ドイツ画壇の重鎮として活躍しました。

ナチス政権下の苦難

しかし、1933年にナチスが権力を掌握すると、リーバーマンはユダヤ人の出自を理由に非難されるようになります。芸術院からもナチス体制への態度を問われ、1933年5月には「芸術家が出自や政治によって非難される状況下では、芸術院にとどまることはできない」として、名誉総裁の称号を返上しました。発表の機会や栄誉を失ったリーバーマンは、失意のうちに1935年に亡くなりました。かつてはベルリン市の名士であり、芸術院の重鎮であった彼の葬儀には、ケーテ・コルヴィッツら数名しか参列しなかったと言われています。

ベルリン分離派の長として

19世紀末から20世紀初頭にかけて、ベルリンではユーゲント・シュティールと呼ばれる新しい美術様式が台頭しました。1895年、リーバーマンは文芸雑誌『Pan』の創刊メンバーとなり、表紙画にはパーン神の頭部を描き、版画作品を提供しました。この雑誌には、作家ユリウス・マイヤー＝グラーフェや美術史家リヒャルト・グラウルなど、当時の著名な文化人が携わっていました。

作品

リーバーマンの作品は、印象派の影響を受けつつも、独自のスタイルを確立しています。彼の絵画には、日常の風景や人々の生活が描かれており、その描写は写実的でありながらも、光の表現や筆致には独特の魅力があります。特に、晩年の作品には、彼の内面的な感情が反映されているとも言われています。

主な著作

『カール・ステフェック(1818-1890). その芸術』(1913)
『絵画におけるファンタジー：著作と演説』(1986)
『マックス・リーバーマンの庭にて』(2004)

関連資料

佐藤洋子「日欧文化の相互影響について : 『明星』『方寸』とヨーロッパ文芸雑誌」『早稲田大学日本語研究教育センター紀要』(1995)
関楠生『ヒトラーと退廃芸術』(河出書房新社)
Zweig, Arnold. 『Herkunft und Zukunft?: 2 Essays zum Schicksal e. Volkes』(1929)

主な展示図録

リーバーマンの作品は、世界各地の美術館で展示されています。彼の生涯と作品をより深く理解するために、以下の展示図録も参考になります。

『彼の時代のマックス・リーバーマン。 展示会とカタログ』(1979)
『マックス・リーバーマンとオランダ』(1980)
『ハンブルクのマックス・リーバーマン：アルスターとエルベ間の風景1890-1910』(1994)
『ドイツ印象派のマックス・リーバーマンという欺瞞』(1995)
『マックス・リーバーマン：人生の風景：ハンス・ヨアヒム・ベンシュ博士とエリザベス夫人の版画コレクション展』(1997)
『マックス・リーバーマンとフランス印象派』(1997)
『マックス・リーバーマン：現実主義者と幻想』(1997)
『マックス・リーバーマン、世紀の変わり目』(1997)
『現代性をめぐる論争：マックス・リーバーマン、皇帝、旧美術館』(2001)
『マックス・リーバーマン：絵を描く、紙との取り組みを省く』(2004)
『マックス・リーバーマン：紙に描いた作品：「魂のイメージ」』(2007)
『マックス・リーバーマン：現代性のパイオニア』(2011)
『マックス・リーバーマンと海』(2011)

外部リンク

Max Liebermann Online（外部リンク）
* ウィキメディア・コモンズには、マックス・リーバーマンに関するメディアがあります。（外部リンク）

まとめ

マックス・リーバーマンは、激動の時代を生きたドイツを代表する画家です。印象派の影響を受けつつも、独自のスタイルを確立し、その作品は現在も多くの人々に愛されています。彼の生涯と作品を振り返ることで、当時の社会や文化、そして芸術に対する情熱を感じることができるでしょう。

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