フランツ・ブルンスヴィック

フランツ・ブルンスヴィック・デ・コロンパ（Franz Brunsvik de Korompa）は、1777年9月25日に生まれ、1849年10月23日に没した、ハンガリーの伯爵であり、優れたチェリスト、そして劇場主としての顔も持った人物です。ハンガリー語ではブルンスヴィク・フェレンツ（Brunszvik Ferenc）として知られます。

彼はポジョニ（現在のスロヴァキア共和国の首都ブラチスラヴァ）で、由緒あるハンガリー貴族の家系に生まれました。祖父であるヨーゼフ・ブルンスヴィック伯爵はハンガリー王室の財務官を務めた人物で、一家がコロンパに所有する広大な地所では、子供たちはしばしば夏を過ごしました。父親はアナトール・ブルンスヴィック、母親はヴァンケル・フォン・ジーベルク女男爵であったアンナ・ブルンスヴィックでした。彼にはテレーゼという姉と、ヨゼフィーネという妹がいました。

一家の主な居住地は、ブダの街を見下ろす丘の上に建つ豪華な宮殿でした。この屋敷は単なる住まいではなく、壮大な美術館を併設しており、そこにはレオナルド・ダ・ヴィンチ、アルブレヒト・デューラー、レンブラントといった巨匠たちの作品を含む300点を超える貴重な絵画が収蔵されていました。さらに、6000冊もの蔵書を誇る大規模な図書館や、珍しい鉱物を展示する部屋もあり、ブルンスヴィックは幼い頃から極めて豊かな文化的環境に囲まれて育ちました。

ブルンスヴィックは生涯を通じて頻繁にウィーンを訪れていました。彼の妹ヨゼフィーネも1799年の結婚後、ウィーンのローテトゥーム通りにあるデイム邸で暮らしていました。優れたチェロの演奏家でもあったブルンスヴィックは、1799年の秋に妹を通じて、当時すでに名声を確立しつつあったルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンと出会います。この出会いをきっかけに、二人の関係は急速に深まり、間もなく互いを親愛を込めて「君」と呼び合うほどの間柄となりました。特に1806年から1812年にかけての時期は、彼らの友情が最も深まった期間とされています。ベートーヴェンはこの親密な友情の証として、この時期に作曲された二つの重要なピアノ作品、ピアノソナタ第23番ヘ短調 作品57、通称「熱情」（1807年完成）と、幻想曲ト短調 作品77（1810年完成）をブルンスヴィックに献呈しています。

1809年、ブルンスヴィックはハンガリーのマルトンヴァーシャールにある自身の私有地の管理を引き受けることになりましたが、ベートーヴェンとの書簡による交流は1814年まで継続されました。彼の活動は領地管理にとどまらず、芸術分野にも及びました。1819年にはペシュトの劇場の支配人に就任し、芸術振興に貢献しました。

1823年には、ピアニストのジドーニエ・ユスト（Sidonie Justh, 1801年 - 1866年）と結婚しました。夫妻は作曲家でピアニストのステファン・ヘラーなど、多くの音楽家と交流を持ちました。また、二人は将来の偉大なヴァイオリニストとなるヨーゼフ・ヨアヒムの才能をいち早く見抜いた人物でもありました。1838年8月25日、ペシュトのAdelskasinoで行われた、当時わずか7歳であったヨアヒムのデビュー公演を夫妻で聴きに来ており、その後の彼のキャリアを後押しするきっかけを作ったと言われています。ブルンスヴィックはその後、ウィーンでその生涯を終えました。

フランツ・ブルンスヴィックは、ハンガリー貴族としての社会的地位と豊かな文化資本を持ちながら、自らも音楽を愛し、演奏し、芸術家たちとの深い交流を育みました。特にベートーヴェンとの友情は、音楽史における彼の最も特筆すべき功績の一つであり、彼に献呈された作品は今なお世界中で演奏されています。

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