フラーテス4世

フラーテス4世：動乱の時代を生きたパルティア王

フラーテス4世（生年不詳 - 紀元前2年）は、アルサケス朝パルティア王国の王として、紀元前40年/38年頃から紀元前2年まで在位しました。彼の治世は、内乱と外圧に満ちた困難な時代でした。

即位までの血塗られた道

フラーテス4世は、先代の王オロデス2世の息子として生まれました。オロデス2世には30人もの息子がおり、後継者争いは熾烈を極めました。当初、後継者として有力だったのは兄のパコルス1世でしたが、彼がローマとの戦いで戦死したため、フラーテス4世に王位を継承するチャンスが巡ってきました。しかし、彼は父王を暗殺するという手段を選びました。毒殺を試みたものの失敗し、最終的には首を絞めて父を殺害し、王位を奪取したのです。

ローマとの攻防

即位後、フラーテス4世は政権の安定を図るため、兄弟の多くを殺害しました。また、ローマ軍の侵攻を撃退するなど、軍事的な手腕も発揮しました。マルクス・アントニウス率いるローマ軍がパルティアに侵攻した際には、巧みな戦術でローマ軍の補給路を断ち、撤退に追い込みました。しかし、この戦いでアントニウスは兵力の3分の1を失うという大損害を被りました。

内乱と反乱の鎮圧

ローマとの戦いが一段落すると、紀元前31年頃にはティリダテス2世が反乱を起こし、王を名乗りました。フラーテス4世は鎮圧に失敗し、スキタイへ逃亡を余儀なくされましたが、スキタイの支援を得て再びティリダテス2世を攻撃し、勝利を収めました。ティリダテス2世はローマに亡命し、その後もローマの支援を受けて何度かパルティアに侵攻しましたが、最終的にはフラーテス4世によって駆逐されました。

その後も、ミトラダテスによる反乱が発生するなど、フラーテス4世は国内の不安定な状況に苦しめられました。

ローマとの和平と暗殺

紀元前20年、フラーテス4世はローマとの和平交渉を行い、アウグストゥスとの間で講和を結びました。その結果、人質として自身の息子たちをローマに送り、代わりにイタリア出身の女奴隷ムサを妻として迎えました。ムサとの間には息子フラーテス5世（フラータケス）が生まれましたが、ムサは自身の息子を王位に就けるため、フラーテス4世を毒殺しました。こうして、フラーテス5世がパルティア王となり、ムサが実権を握ることになったのです。

フラーテス4世の治世は、内乱と外圧に翻弄された激動の時代でした。彼は、王位を簒奪し、兄弟を殺害するなど、冷酷な一面も持ち合わせていましたが、一方で、ローマ軍を撃退するなど、軍事的な才能も発揮しました。しかし、最終的には妻によって暗殺されるという、悲劇的な結末を迎えました。

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