フリカムイ

フリカムイ（huri kamuy）

フリカムイ、または単にフリと呼ばれる存在は、アイヌ民話において語られる巨鳥であり、その特徴や伝承は多くの人々に知られています。片翼の長さが約七里（約30km）もあるとされ、この超自然的な生き物は十勝川上流や網走の海岸に位置する洞窟に住んでいたと伝わります。

特徴と呼称のバリエーション

フリカムイは、海へ出て鮭や鯨を捕食することから、その獰猛さを窺わせます。アイヌの言語では、地域によって呼び名が異なります。近文の方言では「フーリン（hurin）」や「フーリントノ（hurin tono）」と呼ばれ、美幌の地域では「ヒウリ（hiwri）」や「シウリ（siwri）」といった呼称も存在します。また、フリーカムイ、フリー、フリューといった表記も確認されています。こうした多様性は、フリカムイが広範囲にわたる伝承を持つことを示しています。

フリカムイの伝承

フリカムイにまつわる伝承は興味深く、もともとは人間に対して危害を加える存在ではなかったとされています。人々はフリカムイの住処に近づくこともなく、静かに共存していました。しかし、ある出来事がこの平穏を壊しました。それは、一人の女性が山へ食料を採りに行き、意図せずフリカムイの水飲み場を荒らしてしまったことです。泥で汚れた足で小川を渡るという行為が、彼女に思わぬ事態をもたらしました。

フリカムイは水飲み場を荒らされたことで激怒し、その結果彼の心は荒れ放題になりました。以降、彼は人間や動物を次々と襲い、木々や草を破壊し、人々の住居にまで害を及ぼすようになります。彼の羽ばたきは強力で、突風によって木々や家を吹き飛ばすほどの威力を持っていました。この状況にあせった人間たちはフリカムイに対して反撃しましたが、逆にそれがフリカムイの心をさらに傷つけ、彼の暴力は増すばかりでした。

フリカムイの恐ろしさは、瞬く間に村人たちの間で魔物同然に恐れられる存在となりました。完全に制御を失った彼に対抗するため、支笏湖近くのルイカヤルという地域に住む一人の男性が立ち上がります。彼は槍を手に取り、ついにフリカムイを突き殺すことに成功しました。この伝説的な戦いによって、フリカムイは遂に終焉を迎え、人々は安堵の息をつきました。

参考文献

1. 松谷みよ子『日本の伝説（下）』講談社文庫、1975年、259頁-265頁
2. 村上健司『妖怪事典』毎日新聞社、2000年、299頁。
3. 知里真志保『分類アイヌ語辞典（動物編）』平凡社、1975年、216頁。

関連項目

• - 日本の妖怪の一覧
• - ラートシカムイ
• - イペタム - フリカムイを退治した際に使われたという伝承がある刀

このように、フリカムイの伝承はただの神話にとどまらず、アイヌ文化における自然との関係、人々と超自然的存在との触れ合いを映し出しています。

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