フリュネ

フリュネの生涯と名声

古代ギリシアの有名なヘタイラ、フリュネ（別名・プリュネ、フリネ）は、その美しさや魅力、さらには裁判でのドラマチックな出来事で知られています。彼女の本名はムネサレテ（Mnesarete）で、これは「賛美された美徳」という意味を持っていますが、彼女の肌の色が黄色かったことが原因で、「ヒキガエル」を意味するフリュネというあだ名が付けられました。フリュネはボイオティアのテスピアイ出身で、アテーナイに居を構えていたとされています。

フリュネの名声

フリュネはその美貌と存在感から、当時の多く人々の関心を集めました。古代の著述家アテナイオスは彼女について数多くの逸話を残しています。特に、彼女がエレウシスの秘儀やポセイドーンの祭りで、髪を下ろし、衣服を脱いで海に入ったという話は特に有名です。この出来事は著名な画家アペレスに影響を与え、彼はフリュネをモデルに『海から上がるヴィーナス』という作品を制作しました。また、彫刻家プラクシテレスも、フリュネをモデルに古代ギリシア初の女性の裸体像『クニドスのアプロディーテー』を手がけました。

アテナイオスによると、プラクシテレスはフリュネのためにさらに二つの彫刻も制作し、彼女が奉納した黄金の像はその美しさに対する称賛を記録しています。それらの像の一つは、テスピアイの神殿に納められましたが、当時の人々からは「ギリシアの放蕩を願う奉納品」と揶揄されました。また、フリュネは非常に裕福であり、アレクサンドロス大王がテーバイを襲った時の城壁の修復費用を寄付しようとしましたが、その条件が受け入れられず、実現しませんでした。

裁判の際の逸話

彼女の生涯の中で最も注目を集めたのは、裁判に関するエピソードです。フリュネは不敬を理由に訴えられ、雄弁な弁護士ヒュペレイデスが弁護を務めました。裁判が進む中で、ヒュペレイデスが彼女の衣服を脱がせ、彼女の美しさが裁判官たちに影響を及ぼしたと言われています。容姿に圧倒された裁判官たちは、フリュネを有罪にすることができず、結果的に無罪を言い渡しました。

一方で、喜劇詩人ポセイディッポスの作品には、フリュネが裁判官たちに涙ながらに自らの生涯を語ったという別の描写もあります。近年の研究者は、実際には胸元を露出して裁判を受けたかどうか疑問視しており、真実の姿がどのようであったかは不明です。

その他の逸話

フリュネはその美しさから多くの人々を魅了しましたが、リディア王からの求婚にも法外な金額を要求したことがあります。これに対し、王がその金額を受け入れたため、フリュネは王の要求に応じました。ただし、哲学者ディオゲネスには無償で身を捧げたという逸話もあり、彼の精神性を尊重しての行動でした。

フリュネにまつわる多くの逸話や名声は、後の文献や詩に影響を与え続けました。シャルル・ボードレールやライナー・マリア・リルケの作品にも、彼女の美しさや名声が描かれています。フリュネは時代を超えて語り継がれる存在であり、古代ギリシアにおいて象徴的な女性の一人として位置づけられています。

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