プラクシテレス

プラクシテレス：古代ギリシアを代表する彫刻家

プラクシテレス（Πραξιτέλης, Praxitelēs）は、紀元前4世紀にアテナイで活躍した、古代ギリシアを代表する彫刻家の一人です。彼は、大ケフィソドトスの子として生まれ、等身大の女性ヌード像を初めて制作した彫刻家として知られています。彼の作品は、その優美で人間的な表現によって、古代ギリシアの彫刻に新たな境地を切り開きました。

生涯と作品

プラクシテレスの生涯については、詳しい記録は残っていません。しかし、当時の著述家である大プリニウスの記述や、コインに刻まれた彫像のシルエットから、彼の作品の断片を知ることができます。特に、彼の美しいモデルであったとされる高級娼婦フリュネとの関係は、後世の画家や音楽家、劇作家などの想像力を刺激し、様々な作品の題材となっています。

プラクシテレスの作品には、以下のような特徴が見られます。

人間的な神々の表現: ゼウスやポセイドーンといった威厳のある神々よりも、アポローン、ヘルメース、アプロディーテーといった若い神々を好んで制作しました。これらの神々は、人間味あふれる姿で表現されています。
大理石の使用: ほとんどの作品で、パロス島産の大理石が使用されました。この大理石は、プラクシテレスの繊細な表現に適していたと考えられます。
彩色: 彫刻の中には、画家ニキアスによって彩色されたものもありました。この彩色によって、彫刻はさらに生き生きとしたものになったと考えられています。

主要な作品

プラクシテレスの作品として、特に有名なものに以下のものがあります。

幼いディオニューソスを抱くヘルメス: 1877年にオリンピアで発見されたこの彫刻は、プラクシテレスの真作であるとされ、世界的に有名な作品です。しかし、この作品については、ローマ時代の複製品であるという説も存在します。ヘルメスが幼いディオニューソスを抱きかかえ、ブドウを与える仕草が表現されています。
アポロ・サウロクトノス（トカゲを殺すアポローン）: 若いアポローンが、木にもたれかかりながらトカゲを矢で刺そうとしている姿を表現した彫刻です。ルーブル美術館にあるものが有名ですが、クリーブランド美術館には、プラクシテレスのオリジナル作品と信じられるブロンズ像も所蔵されています。
リュキアン・アポロ: 木によりかかったアポローンを表現した彫刻です。頭のてっぺんに触れるポーズが特徴的で、ルキアノスの記述によって知られています。
クニドスのアプロディーテー: プラクシテレスの最も有名な作品の一つで、実物大の女性ヌード像としては最初期のものです。その美しさは、ビテュニア王ニコメデス1世が借金の肩代わりを申し出たほどであったと伝えられています。バチカン美術館に複製品が所蔵されています。

スタイルと影響

プラクシテレスの彫刻スタイルは、以下のような特徴を持つと考えられています。

しなやかな曲線: 像の中央部を縦に割ると、非常に滑らかな曲線が浮かび上がる。作品全体が、もたれかかるような傾向がある。
正面からの鑑賞: 横から見るよりも、正面や後ろから見る方が、作品の魅力がよくわかる。
支柱の活用: 木や布などの支柱が、作品のデザインの一部として効果的に使われている。
* 顔の表現: 顔は3/4アングルで描かれている。

プラクシテレスの作品は、後世の彫刻家に大きな影響を与えました。彼の人間的で優美な表現は、ギリシア彫刻の新たな方向性を示すものであり、その後の西洋美術にも大きな影響を与えています。

結論

プラクシテレスは、古代ギリシアを代表する偉大な彫刻家の一人です。現存する作品は少ないものの、彼の作品が持つ美しさと繊細さは、今日においても多くの人々を魅了し続けています。彼のスタイルは、後の時代における彫刻表現の基礎となり、その影響は現代美術にも及んでいます。

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