フリーオ

フリーオ：ARIB規定に挑んだパソコン用デジタルチューナー

フリーオ(Friio)は、パソコンに接続する外付けデジタルチューナーです。2007年の地デジ対応モデル発売以降、衛星放送対応モデルやExpressCard/34対応モデルなど、様々なバリエーションが展開されました。特筆すべきは、日本のデジタル放送における標準規格であるARIB運用規定に準拠していない点です。

ARIB規定への非準拠と技術的特徴

日本のデジタル放送は、コピー制御情報(CCI)を含んでおり、ARIB規定ではコピーワンス番組の記録時にコピー禁止に書き換えるよう定められています。しかし、フリーオはCCIを書き換えずに記録し、さらにデータの再暗号化も行いません。そのため、録画データは一般的なソフトウェアで視聴・編集可能です。

通常、デジタル放送はMULTI2暗号(B-CAS暗号)でスクランブルされており、視聴・録画にはB-CASカードが必要です。ARIBとB-CAS社に認証されたチューナーにはB-CASカードが付属しますが、フリーオには付属せず、入手もできません。初期のフリーオはB-CASカードが必要でしたが、後に出されたドライバではインターネットからのデータを用いてB-CASカードなしでスクランブルを解除できるようになりました。

CCIを削除しないため、フリーオは法的な取り締まりが難しく、日本国内での販売は行われず、個人輸入での入手となります。コピーワンス制御を受けないという特徴から、発売当初はすぐに完売し、高額で転売されることもありましたが、現在は入手しやすくなっています。

製品の特徴と問題点

フリーオはUSB接続で手軽に使用できる一方、USBケーブルとの相性にシビアで、B-CASカードが認識されないエラーが発生するケースが報告されています。また、衛星放送対応モデルでは、特定の出荷ロットで発煙する製品不良も発生しました。ソフトウェアにも問題があり、正式版ではコマンドラインでのチャンネル設定を受け付けないなどの不具合が報告されています。

製造コストと法的議論

日経BPの報道によると、フリーオはソフトウェアで多くの処理を行い、低コストの部品を採用した簡素な構造のため、製造コストは3000～3500円程度と試算されています。

フリーオの法的位置付けは複雑です。製造・販売自体には違法性がない一方、B-CASカードの利用は著作権法違反や不正競争防止法違反に抵触する可能性があります。また、B-CASカード使用許諾契約約款にも違反する可能性がありますが、契約違反が刑事訴追の対象となるか、立証できるかについては議論の余地があります。

業界と消費者への影響

フリーオの登場は、放送業界や家電業界に衝撃を与えました。放送局はB-CASカードの供給によってコンテンツ保護を行っていますが、フリーオはそのシステムを無効化します。総務省もデジタル放送番組の複製に関する規制を検討するなど、法的規制の動きもありました。

権利者側はコピーワンスやスクランブルに一切関与していないと主張し、スクランブル解除の方向での検討を求める声もありました。消費者団体からも、法規制を支持する意見が出されましたが、家電業界は法的規制に反対し、技術的エンフォースメントにこだわりました。

フリーオはARIB規定の改正や、他社によるPC用デジタルチューナーの発売にも影響を与えました。しかし、他のチューナーでもコピーガードが容易に突破される事例が発生するなど、著作権保護の課題は依然として残っています。

まとめ

フリーオは、ARIB規定に準拠しないことで、デジタル放送の視聴・録画方法に新たな選択肢をもたらしました。しかし、その法的解釈や、著作権保護との関係性については、多くの議論を呼び起こしました。フリーオは、技術革新と法規制のバランス、そしてコンテンツ保護のあり方について、多くの示唆を与えてくれる事例と言えます。

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