フルタゾラム

フルタゾラム：短時間作用型ベンゾジアゼピン系抗不安薬

フルタゾラムは、ベンゾジアゼピン系に属する抗不安薬です。その作用の持続時間は比較的短く、消化管機能の安定にも寄与する特性を持っています。日本では、沢井製薬からコレミナールという商品名で販売されています。

適応症

フルタゾラムは、主に以下の症状の治療に用いられます。

心身症: 過敏性腸症候群、十二指腸潰瘍などの消化器系心身症、呼吸器・循環器系の心身症、自律神経失調症、神経症などが含まれます。特に、過敏性腸症候群、慢性胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍に対しては高い有効性を示す臨床データがあります。臨床試験（618例における二重盲検比較試験を含む16種の試験）では、消化器系心身症に対する有効率が62.9%に上りました。腹痛、便秘・下痢などの便通異常、腹部膨満感、吐き気・嘔吐といった症状の改善に効果を発揮します。ただし、ジアゼパムと比較して、呼吸器系や循環器系の心身症に対する優位性は明確ではありません。
抑うつ状態、緊張、不安: 精神的な抑うつ、緊張、不安といった症状の緩和にも効果が期待できます。

薬理作用

フルタゾラムは、脳内の特定の神経受容体と結合することで作用します。中脳網様体、視床下部、大脳辺縁系といった脳領域に抑制的に働きかけ、不安や緊張を軽減すると考えられています。動物実験では、ジアゼパムと同様の鎮静作用や条件行動抑制作用を示す一方、筋弛緩作用はジアゼパムよりも弱いことが分かっています。

禁忌事項

以下の患者さんにはフルタゾラムの使用が禁忌とされています。

急性狭隅角緑内障：フルタゾラムの抗コリン作用によって眼圧が上昇する可能性があります。
重症筋無力症：筋弛緩作用によって症状が悪化する可能性があります。

副作用

フルタゾラムの使用によって、以下の副作用が報告されています。頻度は低いものの、注意が必要です。

眠気
口渇
めまい、ふらつき、立ちくらみ
倦怠感
頭痛
集中力低下
* 脱力感

承認時および市販後の調査（11,011例）では、副作用の発現率は1.63%と報告されています。

依存性と離脱症状

フルタゾラムは、長期にわたって連用すると薬物依存のリスクがあります。また、服用を突然中止すると離脱症状が現れる可能性があるため、減量は医師の指示に従って徐々に減らす必要があります。厚生労働省は、2017年にフルタゾラムの重大な副作用として依存性と離脱症状に関する情報を追加し、関係機関への通達を行いました。さらに、医薬品医療機器総合機構からも、漫然とした長期使用の回避、用法・用量の遵守、類似薬との併用回避、そして減量時の注意喚起がなされています。

参考文献

コレミナール錠4mg／コレミナール細粒1% 添付文書 (2015年4月). 2016年11月5日閲覧。

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