フレッツ網におけるIPv6

フレッツ網におけるIPv6サービスの詳細解説



NTT東日本およびNTT西日本が提供するフレッツ網におけるIPv6の適用について、その詳細を解説します。フレッツ網は、世界最大級のIPv6ネットワークとして、その規模と技術的な特徴において注目に値します。

フレッツ網におけるIPv6の概要



NTTのフレッツ網は、2023年現在で約2363万回線という大規模なIPv6ネットワークを運用しています。このネットワークは、グローバルユニキャストアドレスで構築されており、その理由は、NTTがIPv6導入を検討していた当時、ユニークローカルユニキャストアドレスやサイトローカルユニキャストアドレスの仕様変更が議論されており、安定的な使用が保証されていなかったためです。また、将来的なIPv6プレフィックス配布数の不足や、ユーザー側でのユニークローカルユニキャストアドレス使用の制限を避ける必要性もありました。さらに、マルチキャストによるコンテンツ配信インフラ整備も計画されていました。

しかし、日本電信電話株式会社等に関する法律により、NTTは海外との通信業務が制限されているため、グローバルユニキャストアドレスを使用していても、IPv6インターネットへの接続サービスを直接提供することはできません。このため、フレッツ網は閉域網としてインターネットから隔離されており、相互にルーティングは行われない構造となっています。この構造が、IPv6-IPv4フォールバック問題やIPv6マルチプレフィックス問題といった副作用を生んでいます。

閉域網としてのIPv6サービス



NTT西日本ではフレッツ光プレミアムおよびv6アプリ、NTT東日本ではフレッツ・ドットネットが個別に契約可能で、また、2007年2月24日以降に新規開通したBフレッツにもIPv6が割り当てられています。NTT東日本では、既存のBフレッツユーザーにも順次IPv6が割り当てられる予定です。これらのIPv6サービスはフレッツ網内でのみ利用可能で、インターネットへのIPv6接続には、フレッツ光ネクストと対応プロバイダとの契約が必要です。当初2011年4月に予定されていたサービス開始は、東日本大震災の影響で遅延しました。一部のプロバイダは、IPv4網内にトンネリングでIPv6網へ接続するサービスを提供しています。

IPv6接続サービス



フレッツ網では、フレッツ光ネクストにおいて、IPv6インターネット接続サービスとして、「インターネット (IPv6 IPoE) 接続」と「インターネット (IPv6 PPPoE) 接続」の2つの方法を提供しています。インターネットへの最終的な接続はISPが提供します。2020年9月時点で、フレッツ光ネクストにおけるISPのIPv6接続サービスの普及率は76.1％です。Bフレッツやフレッツ光プレミアムの既存ユーザーの一部は、フレッツ網内での閉域網通信にIPv6を使用している場合がありますが、IPv6インターネット接続サービスは利用できません。NTT東西とISPは、フレッツ光ネクストへの変更を推奨しており、フレッツ光ネクスト以外でIPv6インターネットに接続する場合は、別途トンネリング接続サービス (IPv6 over IPv4) を利用する必要があります。

インターネット (IPv6 IPoE) 接続



この方式は、「ネイティブ方式」または「NGN IPoE」とも呼ばれます。ISPがVNE（Virtual Network Enabler）事業者のサービスをリセールする契約形態により、ユーザーはVNEから割り当てられたIPv6プレフィックスを使用して、フレッツ網（NGN）からVNEを介して直接インターネットに接続します。IPv6通信はNGN経由で直接インターネットとルーティングされます。フレッツ・v6オプション契約が必須で、これによりNGNがVNEとの直接IPv6通信に利用できるようになります。この通信経路は、ISPのPPPoEネットワークを経由せず、NGNを介した直接通信であるため、PPPoEセッションを消費しません。ホームゲートウェイ（HGW）がある場合はDHCPv6-PDで/56プレフィックスが払い出され、HGWから/64プレフィックスが広告されます。HGWがない場合は、/64プレフィックスが直接広告されます。PPPoEと異なり、RADIUSによる認証は不要ですが、複数のISPとの同時契約はできません。ISPがVNE事業を運営していない場合、この方式は利用できません。この方式では、ISPはIPv4・IPv6トラフィックをVNEに委託する形になります。また、網終端装置を経由しないため、帯域輻輳による速度低下が起こりにくく、レイテンシも改善されるとされています。

IPv4 over IPv6



「インターネット (IPv6 IPoE) 接続」利用時、VNEがオプションとして提供する場合があります。IPv6 IPoEネットワーク上で、トンネリングまたはトランスレーションによりIPv4接続性を確保します。IPv4仮想経路はユーザーCPEとVNE事業者機器の間でIPv6上に直接確立され、VNEはIPv6の疎通とIPv4接続性を担当します。ただし、IPv4がトンネル経由となるため、従来のPPPoEで可能だったポートフォワードやサーバー公開、特定プロトコル利用が制限される場合があります。

対応CPE (IPv4 over IPv6を利用する場合)



  • - ひかり電話対応ホームゲートウェイ：MAP-E方式やDS-Lite方式に対応。
  • - IPv6 IPoEおよびIPv4 over IPv6に対応した市販ブロードバンドルーター。
  • - SoftBank光の場合は、光BBユニットが必要。

対応CPE (IPv4 over IPv6を利用しない場合)




最低限、IPv6パススルー機能のあるルーターでもIPv6接続が可能となる場合があります。

インターネット (IPv6 PPPoE) 接続



この方式は、「トンネル方式」または「NGN PPPoE」と呼ばれます。従来のIPv4 PPPoEと同様に、NGN上にIPv6 PPPoEトンネルを張り、IPv6接続を実現します。フレッツ・v6オプション契約は不要ですが、追加のPPPoEセッションを消費し、ISPとの契約が必要です。端末との通信では、IPv4にはNAT/NAPT、IPv6にはルーティングが適用されます。NGN閉域網へのIPv6通信にはNAT/NAPTが適用されます。

対応CPE




フレッツ網でのIPv6サービスに関する諸問題



フレッツ光ネクストのIPv6サービス開始以前から、端末がIPv6機能を搭載し始めたことで、ルーターの機能未対応や設定ミスによる副作用が発生していました。フレッツ網の閉域網としての特性に起因するこれらの問題は、ISP、CPE、ユーザー端末の正しい設定で解決できます。

IPv6-IPv4フォールバック問題



フレッツ網内IPv6アドレスが割り振られた端末が、AAAAレコードによるIPv6アドレスを受け取った場合、IPv4アクセスが遅延する問題です。フレッツ網内アドレスはインターネットと疎通できないため、タイムアウト後にIPv4でアクセスを試みます。この再試行がアクセス待ち時間を増やします。RFC 6555の実装で緩和されることもありますが、根本的な解決にはIPv6インターネット接続サービスが必要です。Windows 8では、RFC 6724の実装変更により、IPv6での接続テストに基づき優先順位を決定します。

フォールバックのタイムアウト時間とフレッツ網側対策



タイムアウト時間は環境により数10秒になることもあります。フレッツ網側では、通常のIPv6インターネットアドレス宛のTCPコネクションを試みると、TCP RSTを返してセッションを強制切断し、IPv4へのフォールバックを促します。ただし、UDPには効果がなく、端末実装によってはエラーとなる場合があります。タイムアウトによる遅延は、Webブラウジングなどの際に累積し、体感速度の低下につながる場合があります。

AAAAフィルタ



IPv6-IPv4フォールバックによる遅延を解消するため、ISPが提供するDNSサーバーでAAAAレコードを返さず、Aレコードのみを返す対策です。適用パターンはISPによって異なり、IPv4のみのユーザーに適用されたり、IPv4クエリのみに適用されたりします。

IPv6マルチプレフィックス問題



フレッツ網内アドレスとIPv6インターネットアドレスが同時に端末に割り振られることで、通信時に送信元アドレスの選択によって通信ができない問題です。解決策として、RFC 6724のポリシーテーブルでネットワークを分離するか、ルーターでLAN内に配布するプレフィックスをISP側のものに限定する方法があります。マイクロソフトはポリシーテーブルによる対応を推奨していませんが、ルーターによる解決策が有効です。フレッツ・ADSLやBフレッツでIPv6 over IPv4を利用している場合も同様の問題が生じます。

（参考）IPv6 PPPoE対応CPEの要求仕様



フレッツ光ネクスト下では、CPEに次の機能が求められます。これはフレッツ網特有の仕様です。

  • - ISPから取得したプレフィックスのみを端末に配布。
  • - NGN内通信を可能とするIPv6NAT機能。
  • - NGN内プレフィックスを判別しIPv6NATを適用する経路振り分け機能。

IPv4、IPv6二重投資問題



ISPはIPv4とIPv6のネットワーク設備を個別に維持する必要があり、二重投資が課題となっています。このため、IPv4 over IPv6によりIPv6ネットワークの一元化が検討され、「インターネット (IPv6 IPoE) 接続」として提供されています。



脚注




注釈




出典




参考文献


小川, 晃通、久保田, 聡『徹底解説v6プラス』（PDF）日本ネットワークイネイブラー監修、ラムダノート、2020年1月。

関連項目


 Next Generation Network
トンネリング
 ブロッキング (インターネット)

外部リンク


IPv6アドレスを用いたインターネット接続について - NTT東日本
インターネット（IPv6 IPoE）とは - NTT西日本
フレッツ・v6オプション - NTT東日本
 フレッツ・v6オプション - NTT西日本
* OCN IPv6インターネット接続 - NTTレゾナント

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