NGN(次世代ネットワーク)とは
Next Generation Network(NGN)は、固定
電話網と
インターネットの融合を目指し、
音声、データ
通信、
ストリーミング放送などの
マルチメディアサービスを統合的に提供する次世代ネットワークです。従来の
回線交換方式から
パケット交換方式への移行を基盤とし、IP(
インターネットプロトコル)技術を全面に活用しています。
NGNの背景
電話網では、グラハム・ベルの
電話機発明以来、
回線交換方式が用いられてきました。一方、
インターネットでは
パケット交換方式が主流です。
2000年代に入り、データ
通信の需要が
音声通信を上回り、
パケット通信網でのリアルタイム
通信技術が発展。
回線交換網の維持費を考慮すると、
パケット通信網で全てを賄う方が有利となり、
インターネット電話が普及しました。しかし、
インターネットは設定の簡便性やセキュリティ面で課題が残ります。そこで、IPネットワークの利点を活かし、
通信網を再構築する試みがNGNです。これは、
電話網と
インターネットの融合に対する、
電話側からのアプローチとも言えるでしょう。
また、ユニファイドメッセージングなど
音声とデータを組み合わせたアプリケーションのニーズや、トリプルプレイ(
電話、データ
通信、
ストリーミング放送)
サービスへの要望も高まりました。高速
通信網を有効活用し、電気
通信事業者の競争力を高めるため、NGNは重要な役割を担っています。
NGNの研究と標準化
ITU-T(国際電気
通信連合 電気
通信標準化部門)では、1996年頃からGII(Global Information Infrastructure)の研究を進めてきました。NGNはGIIの一つの実現形態と位置付けられ、以下の組織を中心に研究が進められました。
JRG-NGN:
2003年9月に発足し、NGNの定義や参照モデルに関する勧告を策定。
FG NGN:
2004年5月に組織され、30以上のドキュメントを作成。
NGN-GSI:
2006年1月以降、SG13の会合で活動を開始。
初期のNGN研究では、既存の金属回線を利用した技術が検討されましたが、光ファイバ
通信の普及に伴い、高速
通信への対応が重視されるようになりました。
標準化においては、欧州電気
通信標準化機構(ETSI)のTISPANやITU-TのFGNGNが中心となり、
2006年にはITU-TでNGNに関する様々な勧告が制定されました。これらの標準では、NGNがIPネットワークを基盤とし、SIP(
Session Initiation Protocol)を
通信プロトコルとして使用すること、FMC(固定・
移動体通信の統合)やトリプルプレイ
サービスを提供すること、
3GPPのIMS(IP Multimedia Subsystem)を基本構造とすることなどが規定されています。また、QoS(
Quality of Service)制御により、高速データ
通信とリアルタイム
通信の両立も可能とします。
NGNのアーキテクチャ
ITU-Tで示されたNGNのアーキテクチャは、以下の要素で構成されています。
エンドユーザ機能(EUF):ユーザの端末やネットワーク。
トランスポート・ストラタム:ユーザのデータを転送し、以下の機能を提供します。
トランスポート機能:
パケット転送を担います。
ネットワーク・アタッチメント制御機能(NACF):端末の認証やIPアドレスの払い出しなどを行います(ETSIではNASSと呼称)。
資源アドミッション制御機能(RACF):QoS保証を含む
通信の受付制御を行います(ETSIではRACSと呼称)。
ユーザプロファイル・サーバ機能(UPSF):ユーザの識別やセキュリティ情報を管理します。
サービス・ストラタム:トランスポート・ストラタムを制御し、以下の機能を提供します。
サービス制御機能(SCF):コネクション設定や帯域を管理するSIPサーバ群です。
アプリケーション・サーバ機能(ASF):Webとの連携や付加価値
サービスを実現します。
管理機能:トランスポート・ストラタム、
サービス・ストラタム、エンドユーザ機能を管理します。TMN(TeleManagement Networks)の枠組みに従います。
サードパーティ・アプリケーション:
サービス・ストラタム上で動作する外部のアプリケーション。
他のネットワーク:他のNGN網やPSTN、
インターネットなどと接続します。
NGN
サービスには、IPネットワークインターフェースをユーザに提供するシミュレーション・
サービスと、
通信事業者内部の機器をIP系に交換するエミュレーション・
サービスがあります。シミュレーション・
サービスでは、ユーザはIPネットワーク機器や変換装置を接続する必要がありますが、エミュレーション・
サービスではネットワークインターフェースの変更はありません。
各国におけるNGNの導入
2000年代に入り、各国で
公衆交換電話網をNGNに置き換える動きが活発化しています。例えば、
NTTグループ、
KDDI、ブリティッシュテレコム、
ドイツテレコム、韓国
通信、
中華電信などが、それぞれIP網への移行計画を発表しています。
日本におけるNGN
NTTグループのNGNは、SIPを用いて
電話サービスや映像
通信サービスを統合的に実現するIPネットワークです。
サービス事業者はSNI(
サービス・網インタフェース)を通じてNGNの機能を自由に制御できます。アクセス回線には光ファイバが前提となり、UNI(ユーザ・網インタフェース)に対応する装置として、ONUがユーザ宅に設置されます。
NTTグループは
2006年12月にNGNのフィールドトライアルを開始し、2008年3月には「
フレッツ光ネクスト」として商用
サービスを開始しました。
NGNの相互接続
NGNのオープン化も議論されており、
PPPoE方式の網終端装置の設置基準や、IPoE接続のGWルータ増設などが検討されています。また、帯域換算係数を利用して、広帯域
サービスの普及が促進されています。
参考文献
技術参考資料 IP
通信網
サービス - NTT東日本
技術参考資料 IP
通信網
サービス - NTT西日本
関連項目
Internet Protocol
VoIP
IP網による
音声リアルタイム
伝送技術
Fixed Mobile Convergence
フレッツ網における
IPv6
NGN以前に構想されていた次世代
電話網
B-
ISDN
外部リンク
NGN(次世代ネットワーク) - NTT東日本
次世代ネットワーク(NGN)について - NTT西日本
*
『NGN』 - コトバンク
この情報は、NGNの概要、歴史、技術的特徴、現状などを包括的にまとめたものです。