フレッド・ギャラガー

フレッド・ギャラガー（Frederick Gallagher、1968年11月15日 - ）は、アメリカ合衆国出身の漫画家、イラストレーターです。男性。現在はミシガン州アナーバーに、妻のサラ・ギャラガーと息子ジャック・ギャラガーと共に暮らしています。

人物と経歴

ギャラガーは、人気ウェブコミック作品である『メガトーキョー』の作者として広く知られています。かつては建築学で修士号を取得しており、建築設計事務所に勤務しながら『メガトーキョー』の連載を続けていました。しかし、後に創作活動に専念するため、プロの漫画家へと転身しました。インターネット上では「Piro（ぴろ）」というハンドルネームを使用しており、これは自身の作品『メガトーキョー』の男性主人公の名前でもあります。ギャラガー自身によれば、キャラクターとしてのPiroは、自身の大学時代を理想化した姿であり、その名前は日本のビジュアルノベルゲーム『Kanon』に登場する猫からインスピレーションを得たものだそうです。

作品

メガトーキョー

ギャラガーの代表作であるウェブコミック『メガトーキョー』は、2000年8月14日に連載が開始されました。当初は、ウェブサイトのドメイン所有者であったロドニー・キャストンが原作を多く担当し、ギャラガーが作画を行う共同制作の形をとっていました。しかし、創造性の方向性の違いから、2002年5月にキャストンがギャラガーに著作権を譲渡。以降、『メガトーキョー』はギャラガー単独で、原作と作画の両方を手がけることになりました。この単独での創作活動への移行は、勤務先の設計事務所を解雇されたことと、『メガトーキョー』自体の成功が重なった結果、2002年10月に実現しました。

『メガトーキョー』の最大の特徴は、その全エピソードがウェブサイト上で無料で公開されている点です。各話には、作者であるギャラガー自身によるコメントが添えられています。

単行本としても出版されており、2008年時点では、アメリカの有力紙『ニューヨーク・タイムズ』のブック・レビュー欄でベストセラーリストの11位にランクインするなど、商業的な成功も収めています。ウェブコミックとしても、同時点で月間ユニークユーザー数が260万人、月間ページビューが1,370万に達するなど、非常に多くの読者を得ています。

日本国内では、講談社が翻訳権を取得し、日本語版の単行本が刊行されています（訳者は椎名ゆかり）。

共同制作期と単独制作期では、作品の作風に変化が見られます。キャストンとの共著だった初期は、テンポの良いストーリー展開とスラップスティックなコメディ要素が強かったのですが、ギャラガーが単独で制作するようになってからは、物語の進行ペースは緩やかになり、登場人物たちの複雑な心理描写や人間関係の掘り下げに重きが置かれるようになりました。ギャラガーの描くストーリー、キャラクターデザイン、そして演出には、日本の漫画文化、特に恋愛シミュレーションゲームや美少女ゲームからの強い影響が見て取れます。この変化に対して、批評家の中には高く評価する声がある一方で、初期の分かりやすいコメディを好むファンからは、作風の変化について様々な意見が出ているようです。

作画手法も特徴的で、『メガトーキョー』の原稿は、コマ割りを示す枠線も含め、全て鉛筆のみで描かれ、それがスキャンされてデジタル化されています。

その他の作品

The Fine Red Cat: ジェニファー・アン・ギャラガー（ギャラガーの姉）による児童向け絵本。ギャラガーが作画を担当しており、1993年の初出。これがギャラガーが作画として商業出版された最初の作品です。
Fredart: 過去にギャラガーが描いたイラストなどをウェブサイト上で無料公開した自選集です。ラフスケッチ、未公開作品、実験的な作品などが多く含まれていました。『メガトーキョー』連載開始後は、同作の登場人物のイラストや、未完の構想であるWarmthに関する作品が中心となりました。
envelop(e): ギャラガーが「同人誌」と称してFredartで発表した短編小説です（1999年初出）。学校の靴箱に間違って入ったラブレターを巡る勘違いから、幼なじみの男女が互いに好意を抱いていたことに気づくというストーリーで、日本の恋愛シミュレーションゲーム『トゥルーラブストーリー2』の登場人物、七瀬かすみへのトリビュート作品でした。2012年3月時点では、この作品はウェブ上では公開されていませんでした。
Warmth: 『メガトーキョー』連載開始前にギャラガーが温めていたシリアスなラブストーリーの構想です。日本で働くクーリエ便配達員のトム・ムーアと、帳紗恵子、静原映美というキャラクターを主人公としていました。紗恵子と映美は後に『メガトーキョー』にカメオ出演しています。Warmthの冒頭部分は、かつて雑誌『AmeriManga』に掲載されました。『メガトーキョー』の成功による多忙さからか、長期にわたり進展はありませんが、ギャラガーは将来的にこの作品の制作を再開したいという意向をたびたび示しています。
* Blurred: ギャラガーが「blurri」という別名義で公開していたウェブサイトです（1998年初出）。ぼやけた（'blurred'）画像をクリックするとセクシーなイラストが表示されるという仕組みでした。一度は公開を中断しましたが、2006年に匿名掲示板のユーザーによって作品が「発掘」され、嫌がらせを受けたことを受け、自身の作品であることを認め、ウェブサイトを再開しました。こちらも2012年3月時点では再び公開停止されています。

新作構想

2009年には、Endgamesという作品のプレビューを公開し、これを「同人誌」と表現しました。その後、2011年5月には、ウェブフィクション作家トーマス・クナップによる執筆で、このEndgamesがライトノベル化されること、そしてEndgamesを含む計4作品のライトノベル構想が進んでいることが発表されました。また、同時期にショートストーリー「Behind the Masque」も発表され、同年6月10日にAmazonのキンドルストアで販売されています。

イベント出演

ギャラガーは、アメリカ合衆国のアニメコンベンションにおいて、最も人気の高いアーティストの一人として知られています。2001年から2003年、そして2005年にはOTAKONに出演したほか、A-kon、サクラコン、コミコン・インターナショナルといった主要なコンベンションに頻繁にゲストとして招かれています。初めてパネルディスカッションを行ったコンベンションはアニメ・セントラルでした。また、Anime Expo Tokyoでは、アメリカ合衆国からの最初のゲストアーティストとしてクレジットされています。

これらのコンベンションでは、「Naze Nani Megatokyo」という、アニメ『機動戦艦ナデシコ』のおまけコーナーから着想を得たパネルディスカッション形式の企画を行っていました。このパネルは、コミックストリップを基にしており、ギャラガー自身（「Piro」として）と、共同制作者だったロドニー・キャストン（「Largo」として、彼がプロジェクトを離れるまで）、そしてドミニク・グエン（「Dom」として）が参加していました。

アメリカ国外のコンベンションにも積極的に参加しており、2003年11月からはイギリスのノーザンプトンで開催されるAyaconにゲスト出演しています。ただし、2006年にドイツのカッセルで開催予定だったConnichiへの出演は、妻のチケット予約に失敗したため、残念ながらキャンセルとなりました。

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