フレデリク3世 (デンマーク王)

フレデリク3世：動乱の時代を生き抜いた絶対王政の確立者

フレデリク3世（1609年3月18日 - 1670年2月19日）は、デンマーク＝ノルウェーの王として、その治世は外交における苦戦と、国内での絶対王政の確立という二つの側面によって特徴づけられます。

生涯

即位以前

クリスチャン4世とアンナ・カタリーナの息子として生まれたフレデリクは、長男ではなかったため、当初は王位継承の可能性は低いとされていました。若くしてブレーメン司教などの要職を歴任し、行政官としての経験を積む一方で、文学や科学を愛好する教養人でもありました。

1643年、従妹であるゾフィー・アマーリエと結婚。彼女の情熱的で野心的な性格は、フレデリクだけでなくデンマークの運命にも大きな影響を与えました。

トルステンソン戦争では軍の司令官に任命されるも、指揮官との不和により目立った功績を上げられませんでした。1647年に兄が亡くなったことで王位継承の可能性が開けましたが、1648年に父王が死去した後も、王位継承は容易には決まりませんでした。最終的に、王権を制限する憲章に署名することで、7月6日に王として認められました。フレデリクは、先代の王とは異なり、無口で謎めいた人物でしたが、冷静で自己抑制の効く性格でした。また、熱心な蔵書家としても知られ、1648年頃にデンマーク王立図書館を創設しています。

治世の初期には、義兄弟であるコルフィッツ・ウルフェルトとハンニバル・セヘステッドとの権力闘争に明け暮れ、1651年には二人を王室から追放することに成功しました。

スウェーデンとの戦争と敗北

フレデリク3世は、その才能にもかかわらず、自国と自身の限界を完全には理解していませんでした。1654年にスウェーデン王カール10世が即位すると、その好戦的な性格からデンマークへの脅威となることを予感していました。1656年、スウェーデンがポーランドで勢力を拡大すると、オランダはスウェーデンに宣戦布告。スウェーデンがポーランドで孤立すると、フレデリク3世は好機と捉え、1657年にスウェーデンに宣戦布告しました。

しかし、カール10世はドイツからユトランド半島に侵攻し、瞬く間に占領しました。1658年1月には、大寒波により海峡が氷結。カール10世は氷上を渡ってシェラン島に侵攻し、デンマーク軍の裏をかきました。この前代未聞の「氷上侵攻」に戦意を喪失したフレデリク3世は、戦わずして降伏し、ロスキレ条約でスコーネ地方などを割譲させられました。

コペンハーゲン包囲

しかし、フレデリク3世がオランダに接近したことを危険視したカール10世は、1659年に再びデンマークに侵攻しました。しかし、フレデリク3世は「私は私の巣で死ぬ」と述べ、コペンハーゲンでの徹底抗戦を指示。市民も王への忠誠を示し、防衛線を強化しました。スウェーデン軍はコペンハーゲンを包囲しましたが、デンマークはオランダやブランデンブルク選帝侯の援軍を得て、スウェーデン軍を撃退しました。10月にはエーレスンドの戦いでスウェーデン軍を破り、コペンハーゲンは解放されました。

その後、カール10世は陣中で急死し、1660年にコペンハーゲン条約が締結。フレデリク3世は、ロスキレ条約で失ったトロンハイム地方とボーンホルム島を回復しました。この一連の対スウェーデン戦争は、デンマークでは「カール・グスタフ戦争」と呼ばれています。

絶対王政の確立

対スウェーデン戦争でのフレデリク3世の勇敢な姿は、国民の熱狂的な支持を得ました。この支持を背景に、フレデリク3世は1660年に革命を起こし、貴族の勢力を削ぎ、議会の同意を得て絶対王政を確立しました。市民層が絶対王政を支持したことが大きな要因でした。1661年、議会は王に無制限の権力を保障する書類に署名し、フレデリク3世は名実共に絶対君主となりました。

治世の最後の10年間は、絶対王政の確立と戦後の復興に費やされました。中央省庁の設立、税制改革、地方行政の改革など、様々な政策を実行し、国力を増強しました。1665年には絶対王政の「憲法」にあたるKongelovenが制定され、支配体制が確立しました。また、国防にも力を入れ、コペンハーゲンを要塞都市化し、徴兵制も導入しました。

1670年、フレデリク3世はコペンハーゲン城にて60歳で死去。ロスキルデ大聖堂に葬られました。彼の後を継いだのは、息子のクリスチャン5世でした。

子女

フレデリク3世は、王妃ゾフィー・アマーリエとの間に、以下の子を儲けました。

クリスチャン5世（1646年 - 1699年）
アンナ・ソフィー（1647年 - 1717年）
フレゼリゲ・アメーリエ（1649年 - 1704年）
ヴィルヘルミーネ・アーネスティーネ（1650年 - 1706年）
フレデリク（1651年 - 1652年）
ヨアン（1653年 - 1708年）
ウルリゲ・エレオノーラ（1656年 - 1693年）
ドロテア・ユリイェーネ（1657年 - 1658年）

また、愛妾マルグレーテ・パペとの間に庶子ウルリク・フレデリク・ギュレンルーヴェ（1638年 - 1704年）をもうけました。

まとめ

フレデリク3世は、外交では苦戦を強いられましたが、国内では絶対王政を確立し、デンマークの歴史において重要な役割を果たしました。その治世は、動乱の時代を生き抜いた一人の王の姿を私たちに伝えています。

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