フーズフーズ

フーズフーズ

ナムコ（現バンダイナムコエンターテインメント）が手掛けた人気野球ゲームシリーズ『プロ野球ファミリースタジアム』（通称ファミスタ）に登場する、架空のプロ野球チームであるフーズフーズ（Foodsfoods）。そのユニークな出自と歴史は、ファミスタシリーズの歩みと深く結びついています。

誕生の経緯

フーズフーズが初めてゲーム画面に姿を現したのは、1986年にリリースされたシリーズ第一作『プロ野球ファミリースタジアム』でした。当時のゲームソフト開発においては、搭載できるROM容量に大きな制約がありました。このため、日本野球機構（NPB）のパシフィック・リーグに所属していた球団のうち、親会社がいずれも食品関連企業であったロッテオリオンズ（現在の千葉ロッテマリーンズ）と日本ハムファイターズ（現在の北海道日本ハムファイターズ）を一つのチームとしてゲーム内に収める必要が生じました。こうして誕生したのが、両球団の選手を統合した連合チーム、フーズフーズです。ゲームの説明書では「関東食品連合」と紹介され、その略称は日本ハムファイターズと同じ「Fチーム」が用いられました。

初期作品での登場と展開

翌1987年に発売された『プロ野球ファミリースタジアム'87』でも、フーズフーズは前作に引き続き連合チームとして登場しました。また、1988年5月にPCエンジン向けにリリースされた『プロ野球ワールドスタジアム』（ワースタ）でも、同様の形でプレイヤーと対戦または操作可能なチームとして収録されています。

興味深いのは、『'87』のゲームデモ画面には、ロッテオリエンズをモデルにしたオリエンツ（Oチーム）の姿が確認できる点です。しかし、このオリエンツは通常のゲームプレイにおいて使用したり対戦したりすることはできませんでした。一方、PCエンジン版ワースタにおいては、特定のパスワードを入力することで、隠しチームとしてこのオリエンツが登場しました。この隠しチームとしてのオリエンツは、選手のグラフィックが全身白一色のシルエットで表示されることから、一部の資料では「白チーム」とも称されています。

これに対し、同じ1988年の3月に稼働を開始したアーケード版の『プロ野球ワールドスタジアム』では、ロッテと日本ハムにあたるチームは既に独立しており、それぞれ「オリエンツ」「ファイアーズ」として登場していました。この流れを受け、同年12月に家庭用ゲーム機向けに発売された『プロ野球ファミリースタジアム'88』からは、家庭用版でも両球団が独立して収録されることになりました。これにより、容量制約という誕生理由が解消されたフーズフーズは、同時期に存在したもう一つの連合チームであるレイルウェイズ（国鉄スワローズと南海ホークスの連合）と共に、この作品をもって姿を消すこととなります。

その後の復活

ファミスタシリーズから一時的に姿を消したフーズフーズでしたが、その名前は後の作品で再び現れることになります。2005年4月に発売された『ベースボールライブ2005』では、ゲーム内のオリジナルチーム作成機能において、ナムコスターズやレイルウェイズと共に、チーム名、ロゴマーク、ユニフォームのデザインデータとして復活を遂げました。この復活は、続く2006年以降の『プロ野球 熱スタ』シリーズや、PC向けオンラインゲーム『プロ野球 ファミスタオンライン』各シリーズにも引き継がれました。

そして、2007年にニンテンドーDS向けに発売された『プロ野球 ファミスタDS』において、フーズフーズは『'88』での廃止から実に19年ぶりに、単なるデータではなく「チーム」としてゲーム内に復活を果たしました。DS版のレイルウェイズがチーム構成を大幅に変更していたのに対し、フーズフーズはオリジナル版と同様にロッテと日本ハムの混成チームというコンセプトが維持されました。ただし、日本ハムファイターズがかつての東京都から北海道へ本拠地を移しているため、かつての「“関東”食品連合」という説明は、現実との整合性の面でやや揺らいでいると言えます。DS版での略称は「Fdチーム」に変更されました。

また、『ファミスタDS』では、フーズフーズの復活と並行して、千葉ロッテマリーンズと北海道日本ハムファイターズが実名球団として単独で収録されています。このため、フーズフーズは通常のモードではなく、ドリームリーグモード内のイベント戦に限定して登場する特別なチームという位置づけになっています。

関連事項

初代ファミコン版（初代、'87）やPCエンジン版ワースタに登場したフーズフーズの選手と、『ファミスタDS』で復活したフーズフーズの選手リストの間には、共通して登録された選手は存在しません。これは、実在選手の世代交代やチームの再構成によるものです。

フーズフーズが『ファミスタ'88』で解消された後の1989年、カプコンがアーケード向けにリリースした野球ゲーム『CAPCOMベースボール 助っ人外人大暴れ!』には、「オールイースタン」（略称AE）というチームが登場します。このオールイースタンは、フーズフーズと同様にロッテと日本ハムの選手を組み合わせた連合チームであり、ユニフォームの配色も赤紫とピンク色を組み合わせたフーズフーズに類似したものとなっています。同作には、レイルウェイズと同様の組み合わせである「オールウエスタン」（略称AW）も登場しており、他社作品ながらファミスタにおける連合チームのコンセプトを引き継いだ例として挙げられます。

エピソード

フーズフーズの誕生を考える上で、興味深いエピソードが一つあります。フーズフーズのモデルとなった球団の一つ、日本ハムファイターズの前身である日拓ホームフライヤーズの球団売却にまつわる話です。1973年シーズンオフのプロ野球界の再編問題の際、日拓ホームのオーナーであった西村昭孝氏は、ロッテオリオンズへの球団合併を持ちかけました。しかし、当時のロッテオリオンズオーナーであった重光武雄氏と、かつてオーナーを務めた永田雅一氏（1969年から1970年まで）がこの合併を否定したため、実現には至りませんでした。結局、日拓ホームは球団を不動産会社から食品メーカーである日本ハムに売却し、「日本ハムファイターズ」が誕生しました。この合併構想は実現しませんでしたが、時を経てゲームの世界で「食品メーカー連合」としてロッテと日本ハムが一つになったフーズフーズが誕生したことは、偶然ながらもその歴史と無関係ではないと言えるかもしれません。

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