ブガッティ・タイプ41

ブガッティ・ロワイヤル：伝説の超高級車

ブガッティ・タイプ41、通称ロワイヤルは、1927年から1933年にかけて製造された、まさに伝説的な超高級車です。その圧倒的なサイズと豪華さ、そして希少性から、自動車史上に燦然と輝く存在となっています。

誕生の背景

エットーレ・ブガッティが、自身の車をロールスロイスと比較されたことに憤慨したことが、ロワイヤルの誕生のきっかけと言われています。彼は、世界で最も豪華な自動車を作り上げることを目指し、当初は25台の生産を計画していました。しかし、世界恐慌という時代状況も相まって、最終的にはわずか7台（うち6台が現存）しか製造されませんでした。

驚異的なスペックとデザイン

ロワイヤルの全長は6.4m、ホイールベースは4.3mにも及び、車重は約3175kgと、当時の自動車としては信じられないほどの大きさです。その心臓部には、排気量12.763リッターの直列8気筒エンジンを搭載。このエンジンは、長さ約1.4m、高さ約1.1mという、自動車用エンジンとしては最大級のサイズを誇ります。1気筒あたりの排気量が、当時の最新鋭のレーシングカーであるタイプ40のエンジン全体を上回っていたという、まさに規格外のスペックです。

エンジンは巨大な一体鋳造ブロックで構成され、メンテナンスにはエンジン全体を取り外す必要がありました。シャーシも非常に頑丈に設計され、フロントには半楕円リーフスプリング式サスペンション、リアにはブガッティ独自のクォーターエリプティック式サスペンションが採用されています。さらに、クラッチボックスとギアボックスは、騒音低減と快適性向上のため、それぞれシャーシと後軸に配置されるという、現代の感覚からは奇妙に思える設計となっています。

ボディデザインは、すべて個別の特注で、ラジエーターキャップにはエットーレの弟であるレンブラント・ブガッティの象の彫刻をモチーフとしたデザインが施されていました。運転席には、鯨ひげで作られた計器類のつまみや、ウォールナット製のステアリングホイールが備え付けられ、当時のトレンドを反映した豪華な仕様となっています。

7台のロワイヤル

それぞれのロワイヤルは、独自のボディデザインと歴史を持っています。ここでは、代表的な4台について紹介します。

41100 クーペ・ナポレオン: エットーレ・ブガッティ自身の愛車であり、現在ミュルーズの国立自動車博物館に収蔵されています。
41111 クーペ・ド・ヴィル・バインダー: 最初に顧客に販売された車両で、第二次世界大戦中はパリの下水道に隠されていたという逸話があります。現在、フォルクスワーゲングループが所有し、世界を巡回しています。
41121 カブリオレ・ヴァインベルガー: オープンカブリオレ仕様のロワイヤルで、ヘンリー・フォード博物館に収蔵されています。
41131 リムジン・パーク・ウォード: アメリカの富豪に販売され、その後イギリス、そして再びアメリカへと渡り、現在はミュルーズの国立自動車博物館に収蔵されています。

他にも、41141 ケルナー・カー、41150 ベルリン・ド・ボヤージュが存在し、これらもそれぞれにドラマチックな歴史を持っています。これらの車両は、それぞれ異なるボディスタイルを持ち、その希少性と歴史から、莫大な価値を持つコレクターズアイテムとなっています。

ロワイヤルのその後

ロワイヤルの生産終了後、ブガッティは残ったエンジンをフランス国鉄の気動車に転用しました。このことで、ロワイヤルプロジェクトは経済的な失敗から商業的な成功へと転じました。

ロワイヤルの希少性から、レプリカも数多く製作されています。その中でも、特にクオリティの高いレプリカは、オリジナルと見間違うほどの出来栄えです。

ロワイヤルの存在感

ブガッティ・ロワイヤルは、その圧倒的な存在感から、小説や映画など、フィクション作品にも度々登場しています。その独特のスタイルと歴史は、人々の想像力を掻き立て、様々な物語を生み出してきたのです。

まとめ

ブガッティ・ロワイヤルは、単なる自動車という枠を超えた、芸術品であり、歴史遺産です。その希少性、圧倒的なサイズ、そしてドラマチックな歴史は、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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