ブタナ

ブタナ（豚菜）の詳細解説

ブタナ（学名: Hypochaeris radicata）は、キク科エゾコウゾリナ属に分類される多年草です。原産地はヨーロッパで、日本では外来種、いわゆる帰化植物として各地にその姿を見ることができます。フランスでは「豚のサラダ」を意味する名前で親しまれ、実際に食用としても利用されています。

名称の由来と変遷

ブタナには「タンポポモドキ」という別名も存在します。これは、1933年に初めて日本で発見された際に名付けられたものですが、その後、1934年に別の研究者によって「ブタナ」という名前が提唱され、現在ではこちらが一般的な名称として定着しています。

標準和名である「ブタナ」は、フランス語の「Salade de porc（豚のサラダ）」を直訳したことに由来します。また、英名である「Catsear」は、葉の形状が猫の耳に似ていることにちなんで名付けられました。

分布と生育環境

ブタナは現在、北アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドなど、世界中に分布を広げています。日本には昭和初期に侵入したと考えられており、全国各地で見ることができます。

主な生育場所は、道路脇、空き地、牧草地など、日当たりの良い乾燥した環境です。

形態と生態

ブタナは多年草であり、根生葉をロゼット状に広げます。葉の両面には硬い毛が密生しており、葉の形は切れ込みがないものから羽状に深く裂けるものまで様々です。

開花時期は春から夏にかけて（6月から9月頃）。タンポポに似た外観を持ちますが、ブタナは30～60cm程度の花茎が途中で枝分かれし、それぞれの先に直径3～4cmほどの黄色い花を咲かせることが特徴です。花茎には葉は付きませんが、黒色の鱗片状に退化した葉が見られます。総苞片は3列に並び、直立し、背面には白い毛が1列に並んでいます。花はすべて舌状花で構成され、花冠の先端には浅い5つの切れ込みがあります。花床には長さ1.7cmになる膜質の細かい鱗片があります。

花後にはタンポポと同様に、冠毛を持った痩果を形成します。冠毛の長さは花筒の半分以下で、痩果には微細なトゲ状の突起が多数あり、細長く伸びたくちばしの先に羽状に分岐した冠毛が付いています。

ブタナは耕起には弱いですが、刈り取りには強いため、畑や水田ではあまり問題になりませんが、果樹園や芝生を生産する畑では強害草として扱われることがあります。

類似種として、同じくヨーロッパ原産のヒメブタナがありますが、ブタナとヒメブタナの雑種も報告されています。

利用方法

ブタナは全部分が食用可能です。特にヨーロッパでは、葉を茹でて食用にすることが一般的です。成長しすぎた茎葉は硬いものの、若葉は苦みが少なく、サラダ、茹で野菜、揚げ物など様々な料理に利用できます。

また、根はタンポポと同様に、炒ってコーヒーの代替品としてハーブティーとして楽しむこともできます。

ブタナは、その生命力と多様な利用方法で、私たちの身近な存在となっています。

参考文献

長田武正『原色日本帰化植物図鑑』保育社、1976年6月1日。ISBN 4-586-30053-1。

関連項目

キク科
タンポポ
エゾコウゾリナ属

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