ブライアクリークの戦い

ブライアクリークの戦いは、アメリカ独立戦争中の1779年 3月3日に、ジョージア植民地東部、ブライア・クリークがサバンナ川に合流する地点近くで発生した戦闘です。この戦いで、主にノースカロライナ植民地とジョージア植民地の民兵で構成された愛国者軍は、イギリス軍の急襲を受け、壊滅的な損害を被りました。

戦いの背景

1778年、フランスがアメリカ独立戦争に参戦したことで、イギリス軍は戦力をアメリカ南部に集中させました。当初、イギリス軍は南部にあまり関心を示していませんでしたが、ニューヨークと東フロリダから部隊を派遣し、1778年末にはジョージアのサバンナを占領しました。アーチボルド・キャンベル中佐率いる遠征隊は1778年12月29日にサバンナを占領することに成功しました。

オーガスタ占領と愛国者軍の撤退

イギリス軍のオーガスティン・プレボスト准将がサバンナに到着すると、キャンベルにオーガスタの占領とロイヤリストの徴募を命じました。キャンベルは1,000名以上の兵を率いてオーガスタへ進軍し、ジョージアとサウスカロライナの民兵を率いるアンドリュー・ウィリアムソン将軍を撤退させました。その後、キャンベルはロイヤリストを徴募しましたが、期待したほどの成果は得られませんでした。また、ロイヤリストのジョン・ボイド大佐を派遣して各地で兵を募りましたが、大規模な支援部隊を組織するには至りませんでした。一方で、ジョン・アッシュ将軍率いるノースカロライナの愛国者民兵隊がウィリアムソンの陣営に到着したため、キャンベルはオーガスタからの撤退を余儀なくされました。撤退途中、ボイドの部隊がケトルクリークの戦いで敗北したという情報もキャンベルに届きました。

キャンベルはブライア・クリークに架かる橋を焼き、エベネザーで部隊の指揮をマーク・プレボスト中佐に委ね、自身はイギリスへ帰還しました。アッシュ将軍はキャンベル隊を追跡し、ブライア・クリークとサバンナ川の合流点付近に陣を構えました。アッシュは部下に橋の修復を命じ、約1,300名に増強された部隊を率いることになりました。

地形と戦場の制約

ブライア・クリークはジョージア東部を流れる小さな川で、サバンナ川に合流します。合流地点付近は湿地が多く、地形的な制約が強い場所でした。このような地形が、戦いの場所と結果に大きく影響しました。

前哨戦と両軍の動き

アッシュの陣地選定は、背後にクリークと湿地を抱え、防御に適した場所ではありませんでした。副官のウィリアム・ブライアンは陣地を移動させましたが、アッシュが戻ると元の場所に戻されました。

一方、プレボストは迂回作戦を計画し、ブライア・クリークを渡って愛国者軍を包囲しようとしました。陽動作戦として、破壊された橋の付近で囮部隊を展開しました。主力部隊は夜間に急行軍を行い、パリスミル橋から川を渡り、アッシュ隊の退路を遮断しました。アッシュ隊はイギリス軍の動きを察知していなかったか、あるいは有効な対応を取ることができませんでした。

戦闘の経過

3月3日午後、イギリス軍の接近を知った愛国者軍は、急いで部隊を配置しました。しかし、弾薬の不足やマスケット銃の口径の不一致など、準備不足が露呈しました。左翼はブライア・クリークで遮られていましたが、右翼には大きな隙間がありました。

プレボスト隊は3列縦隊で前進し、愛国者軍との戦闘が始まりました。愛国者軍のエルバート隊が射程を詰めるために前進した際、その動きによって隊列に隙間が生まれました。また、イギリス軍騎兵が右翼を脅かしたことで、愛国者軍の隊形は大きく乱れました。この隙を見つけたプレボストは、銃剣突撃を命じました。多くの民兵は銃剣を持っていなかったため、イギリス軍の突撃に耐えられず、隊列を崩して逃げ出しました。エルバートの大陸軍部隊は中央で踏みとどまろうとしましたが、周囲の民兵が逃走し、包囲されたため降伏を余儀なくされました。橋の付近にいた200名の兵士も戦場に到着しましたが、すぐに退却を開始し、最終的には潰走しました。

戦闘の結果と影響

イギリス軍の損害は戦死5名、負傷11名と軽微でしたが、アメリカ側の損害は甚大でした。多くの民兵が逃走中に溺死し、戦場には150名の遺体が残されました。プレボストは227名を捕虜にしたと報告しています。敗戦後、アッシュ将軍は臆病の罪で軍法会議にかけられましたが、無罪となりました。しかし、陣地を適切に守れなかった責任を問われました。

ブライアクリークの敗北は、アメリカ独立戦争を1年長引かせ、1780年のイギリス軍によるサウスカロライナ侵攻を容易にしたと、ウィリアム・ムールトリーは指摘しています。また、ケトルクリークの戦いでの勝利によって高まっていた愛国者軍の士気を大きく低下させました。

この戦いは、アメリカ独立戦争における南部戦線の初期段階において、地形、戦略、そして兵士の練度が、戦いの結果に大きな影響を与えることを示しました。

もう一度検索