ブラキシズム

ブラキシズム（歯ぎしり・食いしばり）とは

ブラキシズム（Bruxism）は、一般的に「歯ぎしり」と呼ばれる、歯を無意識に擦り合わせたり、強く噛み締めたりする行為です。睡眠中だけでなく、起きている間にも起こり得ます。これは単なる癖ではなく、放置すると歯や顎関節に様々な問題を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

ブラキシズムの種類

ブラキシズムは、その動作によって以下の3つのタイプに分類されます。

グラインディング: 歯をギリギリと擦り合わせるタイプで、一般的にイメージされる「歯ぎしり」です。音が大きく、周囲の人に気づかれることもあります。
クレンチング: 歯を強く噛み締めるタイプで、音が出にくいため自覚しにくいのが特徴です。しかし、顎の筋肉に大きな負担がかかります。
タッピング: 歯をカチカチと小刻みに打ち鳴らすタイプです。比較的稀なタイプとされています。

ブラキシズムの頻度と原因

夜間のブラキシズムは8〜16%、昼間のブラキシズムを含めると8〜34%の人に見られると報告されています。しかし、一時的なものであったり、日によって変動が大きいため、正確な頻度を把握するのは難しいとされています。

ブラキシズムの原因は、特定が難しい場合が多いですが、一般的には以下の要因が考えられています。

ストレス: 精神的なストレスや緊張が、ブラキシズムを引き起こす最も大きな要因の一つです。
睡眠障害: 睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害が、ブラキシズムと関連していることがあります。
噛み合わせの不正: 歯並びが悪かったり、噛み合わせが悪いと、ブラキシズムを引き起こしやすくなります。
薬の副作用: 一部の抗うつ薬などが、ブラキシズムの副作用を引き起こすことがあります。
飲酒・喫煙: アルコールや喫煙も、ブラキシズムを悪化させる要因となることがあります。

ブラキシズムが引き起こす問題

ブラキシズムを放置すると、以下のような問題を引き起こす可能性があります。

歯の摩耗・破折: 歯がすり減ったり、欠けたり、割れたりすることがあります。
知覚過敏: 歯が摩耗することで、象牙質が露出し、冷たいものなどがしみやすくなります。
歯周病の悪化: 歯ぎしりによって歯周組織に負担がかかり、歯周病を悪化させることがあります。
顎関節症: 顎関節に過剰な負担がかかり、口を開けにくくなったり、顎関節痛を引き起こしたりすることがあります。
肩こり・頭痛: 顎の筋肉の緊張が、肩こりや頭痛の原因となることがあります。

ブラキシズムの治療法

ブラキシズムの治療法は、原因や症状によって異なりますが、一般的には以下の方法があります。

マウスピース（スプリント療法）: 睡眠時にマウスピースを装着することで、歯ぎしりによる歯や顎への負担を軽減します。
咬合調整: 歯並びや噛み合わせの不正を改善することで、ブラキシズムを軽減します。
薬物療法: 筋肉の緊張を和らげる薬や、睡眠を改善する薬などを服用します。
バイオフィードバック療法: 筋肉の緊張を自覚し、コントロールする訓練を行います。
ストレスマネジメント: ストレスの原因を特定し、適切な対処法を身につけることで、ブラキシズムを軽減します。
リラクゼーション法: 呼吸法や瞑想などによって、心身をリラックスさせ、筋肉の緊張を和らげます。

参考文献

日本補綴歯科学会 編『歯科補綴学専門用語集』（第3版第3刷）医歯薬出版、東京都文京区、2011年2月20日。ISBN 978-4-263-45627-9。
大倉一夫「生体現象としてのブラキシズムの把握 -徳島大学での研究の紹介-」（PDF）『日本顎口腔機能学会雑誌』第6巻第2号、日本顎口腔機能学会、2000年8月、139-145頁、doi:10.7144/sgf.6.139、ISSN 1340-9085、NAID 110001091977、2012年1月20日閲覧。

関連項目

歯学
顎関節症
咬合学

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