ブラショヴ市電

ブラショヴ市電の歴史と概要

ブラショヴ市電（Tramvaiul din Braşov）は、かつてルーマニアに存在した路面電車であり、1987年から2006年まで営業していました。この市電は、ブラショヴという都市において重要な交通手段でしたが、老朽化により運行が終了しました。今回は、ブラショヴ市電の歴史やその前に存在したスチームトラムについて詳しく解説します。

初期の軌道交通

ブラショヴ市内における初の軌道交通は、スチームトラムを利用した路線でした。この路線は、ブラショヴ地方鉄道（Societatea Căilor Ferate Vicinale Braşov）によって建設され、市内の道路上を走る形で延びていました。郊外区間では最高速度が20 km/hに達しましたが、市内の併用軌道区間ではその半分の速度に制限されていました。

当時のルーマニアでは、ブカレストなどの主要都市で馬車鉄道が運行されていましたが、スチームトラムは別の動力を利用している初の試みでした。しかし、第一次世界大戦を挟んだ時期にも存続したものの、煤煙や騒音が問題視され、結局1932年までには廃止されてしまいました。

共産主義時代と路面電車の導入

スチームトラムの撤退後、ブラショヴの公共交通は路線バスなどの自動車が主流になりました。しかし1980年代に入ると、ルーマニア政府は石油輸入の抑制を目的として各都市に路面電車の導入を推し進めました。その結果、1987年8月23日に全長6.7 kmの101号線が開通し、ブラショヴ市電が始まりました。

この市電の開業当初には、ルーマニア産のV3A（3車体連接車）やV2A（2車体連接車）が使用され、1990年代後半以降はドイツから譲渡された車両も導入されるようになりました。これにより、市民の交通手段として重要な役割を果たしました。

劣化と廃止

しかし、1980年代に急ピッチで建設された路面電車路線は、軌道や施設が迅速に劣化する結果を招きました。当時の保守や修繕工事の怠慢により、末期には脱線事故を防ぐために最高速度が10 km/hに制限される事態となりました。さらに、騒音や振動も深刻な問題となり、住民からの苦情が相次ぎました。

こうした中で、施設の保守にかかる高額な費用が問題視され、最終的にブラショヴ市電の廃止が決定されました。2006年11月にはトロリーバスが導入され、路面電車は歴史の幕を閉じました。その後、残された車両や設備は撤去され、スクラップとして売却されました。

まとめ

ブラショヴ市電は、短い期間ながらもブラショヴの交通手段として重要な役割を果たしていました。その歴史は、スチームトラム時代から現代の交通に至る過程を象徴しています。交通手段の変遷や、技術とインフラの発展を振り返るとともに、今後の公共交通の在り方について考える良い機会となります。

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