ブラジキニン

ブラジキニン（Bradykinin, BK）は、9個のアミノ酸が連なったノナペプチドであり、血圧降下作用を持つ生理活性物質の一種です。体内で重要な役割を果たしており、その生成、分解、生理作用について解説します。

生成

ブラジキニンは、キニノーゲンと呼ばれるタンパク質から、血漿カリクレインやトリプシンといった酵素によって生成されます。この生成プロセスは、カリクレイン-キニン系と呼ばれる生化学的経路の一部です。

キニノーゲン: ブラジキニンの前駆体となるタンパク質。
血漿カリクレイン、トリプシン: キニノーゲンを分解し、ブラジキニンを生成する酵素。

分解

ブラジキニンは、肺に存在するキニナーゼ（アンジオテンシン変換酵素、ACE）によって速やかに分解されます。この分解によって、ブラジキニンの血圧降下作用などの生理活性は調節されています。

キニナーゼ（アンジオテンシン変換酵素）: ブラジキニンを分解する酵素。血圧調節にも関与。

分類

ブラジキニンは、カリジンとともにプラスマキニン（血漿キニン、単にキニンとも呼ばれます）に分類されます。これらのキニン類は、血管拡張作用や炎症反応への関与など、共通の生理作用を持っています。

発見の経緯

ブラジキニンの発見は、Rochaらがヘビ毒の研究を行っていた際に、血中にヘビ毒が入ると血圧低下と腸管収縮を引き起こす物質が産生されることを発見したことに遡ります。この物質は、その作用の発現が遅いことから、ギリシア語の"brady（遅い）"と"kinin（運動）"をつなぎ合わせて命名されました。

アミノ酸配列と生理作用の解明

1960年代には、ブラジキニンのアミノ酸配列がArg-Pro-Pro-Gly-Phe-Ser-Pro-Phe-Arg-OHであることが解明されました。その後の研究により、ブラジキニンは血漿および組織におけるカリクレイン―キニン系で産生され、循環調節、血管拡張、浮腫、炎症、痛みといった多くの生理的役割を果たすことが明らかになっています。特に、発痛作用はPGE2（プロスタグランジンE2）によって増強されることが知られています。

生理作用

ブラジキニンは、以下の様な生理作用を持つことが知られています。

血管拡張: 血管を拡張させ、血圧を下げる作用があります。
炎症: 炎症反応に関与し、血管透過性を高め、浮腫を引き起こすことがあります。
疼痛: 痛みを誘発する作用があり、炎症部位での痛みの原因となります。
* 循環調節: 全身の血液循環を調節する役割を担っています。

ブラジキニンは、生体内で多様な生理的役割を担う重要な生理活性物質であり、その作用機序の解明は、様々な疾患の治療薬開発に繋がることが期待されています。

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