ブラジルの映画

ブラジル映画史：黎明期から現代まで

ブラジルの映画産業は、19世紀末にフランスのリュミエール兄弟の映画上映を皮切りに始まりました。それから間もなく、ブラジル人による最初の映像作品が制作され、やがて国産映画の制作が始まります。1908年には初の劇映画が公開され、1913年には初の長編映画が製作されました。1930年代には、サイレント映画全盛期を経て、ブラジル映画は国際的な成功を収める作品を生み出します。

サイレント映画時代とトーキー時代

黎明期のブラジル映画は、サイレント映画が中心でした。初期の監督たちは、ブラジルの風景や社会を描写する作品を制作しました。その後、トーキー時代に入ると、アデマル・ゴンザーガ監督、カルメン・ミランダ主演の『アロー・アロー・ブラジル』(1934)などが国際的な成功を収め、ブラジル映画の存在感を高めました。しかし、ハリウッド映画の台頭により、国産映画は苦戦を強いられることになります。

シネマ・ノーヴォ運動：ブラジル映画の革命

1960年代に入ると、キューバ革命やフランスのヌーヴェルヴァーグ、イタリアのネオレアリズモの影響を受け、ブラジル独自の映画運動「シネマ・ノーヴォ」が興ります。この運動は、ブラジルの社会問題や政治状況を鋭く描いた作品群を生み出し、ブラジル映画に新たな地平を開きました。シネマ・ノーヴォの中心的存在であるネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督、グラウベル・ローシャ監督らの作品は、現在でも高い評価を得ています。特に、グラウベル・ローシャ監督の『太陽の地の神と悪魔』は、シネマ・ノーヴォを代表する傑作として知られています。シネマ・ノーヴォ運動は、1964年のクーデター、1968年の軍政令第五号発令、といった政治情勢の影響を強く受けながらも、1970年代初頭まで続きました。

シネマ・ノーヴォ以降と現代

シネマ・ノーヴォ運動終焉後も、ブラジル映画は文学作品を原作とした作品や、社会問題を扱った作品、移民を題材にした作品などが制作され続けました。1976年にはサンパウロ国際映画祭が開幕し、ブラジル映画の国際的な交流が盛んになります。しかし、1990年には映画産業の危機により、政府による支援が打ち切られるなど、厳しい状況に陥ります。

復活と発展

1990年代に入ると、ブラジル映画は回復の兆しを見せます。ブルノ・バレット監督の『クアトロ・ディアス』、ヴァルテル・サレス監督の『セントラル・ステーション』といった質の高い作品が制作され、世界的な評価を獲得しました。これらの作品は、日本でも劇場公開され、ブラジル映画の新たな魅力を世界に知らしめました。2001年にはブラジル国立映画庁が設立され、ブラジル映画産業は新たな発展の段階を迎えます。

主要な監督、俳優、映画会社

ブラジル映画の歴史を彩ってきた著名な監督、俳優、映画会社を以下に列挙します。

監督: ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス、グラウベル・ローシャ、カルロス・ヂエギス、ヴァルテル・サレスなど

俳優: カルメン・ミランダ、フェルナンダ・モンテネグロ、ロドリゴ・サントロなど

映画会社: アトランティダ・シネマトグラフィカ、ヴェラ・クルス映画社、ブラジル映画配給公社など

主要な映画祭

ブラジルには、サンパウロ国際映画祭、ブラジリア映画祭、グラマド映画祭など、多くの国際的な映画祭が存在し、ブラジル映画の活性化に貢献しています。

まとめ

ブラジル映画は、黎明期からの試行錯誤を経て、シネマ・ノーヴォ運動によって大きな変革を遂げ、現在も世界中で高く評価されています。社会問題や政治状況を鋭く捉え、独特の文化や自然を背景にした作品は、これからも世界中の観客を魅了し続けるでしょう。

もう一度検索