ブラスのひびき

ブラスのひびき

『ブラスのひびき』は、1983年4月から2002年3月にかけて、NHK-FM放送で親しまれた音楽番組です。主に吹奏楽の楽曲に焦点を当てつつ、その演奏や関連情報を紹介する内容でした。

番組の特色と変遷

番組内容は、パーソナリティの個性や方針によって選曲の傾向が異なりました。番組の歴史の中で特に大きな影響を与えたパーソナリティとその時代ごとの特色を以下に示します。

樋口幸弘氏の時代（主に1990年代）

1990年代に番組を担当した樋口幸弘氏は、番組構成に明確なテーマ性を持たせました。例えば、「毎月第○週は特定のテーマを取り上げる」といった形式で、週ごとに異なるテーマに沿った選曲を行いました。

この時代には、「最新吹奏楽事情」と題した特集が設けられ、国内外の新しい作品、特に日本やヨーロッパの若手作曲家による楽曲が積極的に紹介されました。これにより、まだ広く知られていなかった才能や作品が多くのリスナーに届く機会が生まれました。

また、樋口氏は吹奏楽編成による音楽を、ヨーロッパで用いられる「ウィンド・ミュージック」という呼称で紹介することを試みました。これは、吹奏楽とブラスバンドがしばしば混同される状況に対し、ウィンド・ミュージックという言葉を用いることで、その編成や音楽性の違いを明確にしようという意図があったためです。

さらに、酒井格作曲の吹奏楽曲「たなばた The Seventh Night of July」を番組のテーマ曲として選びました。この選曲は、当時まだ発表されて間もなかったこの楽曲が日本全国の吹奏楽関係者や愛好家に知られる上で、非常に大きな役割を果たしました。

朝岡聡氏の時代

樋口氏の後を受けてパーソナリティを務めた朝岡聡氏は、吹奏楽作品だけでなく、ブラスバンド作品もバランス良く取り上げました。前任の樋口氏が吹奏楽を主軸としていたのに対し、朝岡氏は異なる編成のサウンドも積極的に紹介することで、番組の幅を広げました。テーマ曲においても、樋口氏とは異なり、ブラスバンドによる演奏を選んだことがあります。

放送時間

番組の放送時間は、時期によって変更がありました。

1980年代の大半: 毎週日曜日 午前8時30分から9時00分まで
1990年代の大半: 毎週土曜日 午前7時15分から8時00分まで

歴代パーソナリティ

番組を彩った主なパーソナリティは以下の通りです。

初代：秋山 紀夫（あきやま としお）
担当期間：1983年4月から1990年3月
1929年生まれ。吹奏楽指導者として長年活動し、全日本吹奏楽連盟副理事長など、吹奏楽界の要職を歴任しました。
第2代：樋口 幸弘（ひぐち ゆきひろ）
担当期間：1996年4月から1999年3月
番組の方向性に大きな影響を与え、特に1990年代の吹奏楽シーンを紹介しました。
第3代：朝岡 聡（あさおか さとし）
1959年生まれ。フリーアナウンサー。学生時代に楽器演奏の経験があり、NHKでは『今日は一日吹奏楽三昧』など、他のクラシック音楽番組でも進行を務めました。

歴代テーマ曲

番組では、様々な楽曲がオープニングやエンディングのテーマ曲として使用されました。中には、番組を象徴する楽曲となったものもあります。

オープニングテーマに使用された楽曲例:

『たなばた The Seventh Night of July』／酒井格
『デス・オア・グローリー Death or Glory』／ロバート・ブラウン・ホール
『舞踊詩「ラ・ペリ」ファンファーレ』／ポール・デュカス
など

エンディングテーマに使用された楽曲例:

『ユートピア Utopia』／ヤコブ・デ・ハーン
* 『デス・オア・グローリー Death or Glory』／ロバート・ブラウン・ホール
など

特別番組「ブラスの祭典」

毎年春頃（主に3月）には、特別番組として「ブラスの祭典」が放送されることが通例でした。この番組では、その年度の全日本吹奏楽コンクールで演奏された注目曲などが紹介されました。近年は朝岡聡氏が番組進行を担当することが多くありました。

後継番組

『ブラスのひびき』の終了後、NHK-FMでは吹奏楽をテーマにした後継番組として『吹奏楽のひびき』が始まりました。この番組では、作曲家の中橋愛生氏が番組開始当初からパーソナリティを務めています。

『ブラスのひびき』は、約20年間にわたり、日本の吹奏楽界の動向を伝え、多くの名曲や新しい才能を紹介することで、吹奏楽の普及と発展に貢献した重要な番組でした。

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