ブラックウォーター (陸水学)

ブラックウォーターとは

ブラックウォーター（blackwater）は、陸水学において、森林に覆われた湿地や沼地をゆっくりと流れる、水深のある河川を指します。川底に堆積した落ち葉などから溶け出すタンニンによって水が黒〜茶色に着色され、酸性の性質を持つことが特徴です。南米のアマゾン川水系に多く見られます。

ただし、水が黒く見える川がすべてブラックウォーターというわけではありません。陸水学、地質学、地理学、生物学的な研究によって定義される、特有の条件を満たす必要があります。

ブラックウォーターは、一般的な河川に比べて栄養が豊富で、イオン強度もわずかに高いという特徴があります。この水質の違いが、独特の動植物相を育む要因となっています。ブラックウォーターと他の河川が合流する地点では、特に生物多様性が高くなる傾向があります。

ブラックウォーターと他の河川の比較

ブラックウォーターは、イオン組成において他の河川と大きな違いが見られます。酸性が強いため、土壌中のアルミニウムがイオン化しやすく、その濃度が顕著に高くなります。また、ナトリウム、カルシウム、カリウムの濃度が非常に低いことも特徴です。そのため、これらの金属を必要とする巻貝類などは、ブラックウォーターではあまり見られません。溶存イオン量が少ないため、電気伝導度も雨水と同程度に低い値を示します。


生息するプランクトンにも違いが見られます。ブラックウォーターに近い河川とそうでない河川でプランクトン数を比較したデータでは、ブラックウォーター特有のプランクトン相が見られます。例えば、ワムシ類が豊富である一方、ミジンコ類、昆虫の幼虫、ダニ類は少ない傾向があります。

ブラックウォーターと他の河川が合流する地点は、多様な生物が生息するホットスポットとなります。森林外でも幼魚の餌となる甲殻類が豊富に存在するため、多くの魚が産卵のために集まります。

世界のブラックウォーター

ネグロ川：コロンビアなどに位置する、世界最大のブラックウォーターです。
モラヴァ川：チェコなどに位置します。
ゴードン川：オーストラリア、タスマニアに位置します。
オリノコ川：ベネズエラ、コロンビアに位置します。
セントジョンズ川：アメリカ合衆国フロリダ州に位置します。

関連項目

ボグ

ブラックウォーターは、独特な生態系を育む貴重な環境です。その保全と研究は、生物多様性の維持において重要な意味を持ちます。

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