ブラックハット (映画)

ブラックハット (Blackhat) - サイバーテロに挑むハッカーたちの物語

『ブラックハット』は、2015年に公開されたアメリカ映画で、サイバーテロを題材にしたサスペンスアクションです。マイケル・マン監督が、エキゾチックなアジアの雰囲気と洗練されたコンピューターの世界を融合させ、緊張感あふれる物語を展開しています。

ストーリー

物語は、中国と香港で稼働する原子力発電所が、悪質なハッカー集団「ブラックハット」によるサイバー攻撃を受けるところから始まります。冷却ポンプが破壊され、水蒸気爆発が発生。メルトダウンは免れたものの、大きな損害を被ってしまいます。さらに、株価市場へのハッキングも発生し、大豆価格が暴騰。中国政府は、事態を収拾するため、軍の情報部大尉チェン・ダーウェイに調査を依頼します。ダーウェイは、ハッキングに使われたコードが、かつてアメリカ留学中にルームメイトだった天才ハッカー、ニコラス・ハサウェイが作成したものであることを突き止めます。アメリカでも同様の原発ハッキングが発生したことから、米中の合同捜査が開始されます。ダーウェイは、妹でネットワークエンジニアのリエンと共に渡米。FBI捜査官バレットに、服役中のハサウェイの協力を提案します。カード詐欺の常習犯で刑務所に服役中のハサウェイは、ハッカー逮捕への協力と引き換えに釈放を条件に捜査への参加を承諾。共に「ブラックハット」の足跡を追うことになります。

キャスト

- ニコラス・ハサウェイ：クリス・ヘムズワース（三宅健太）

- 服役中の凄腕ハッカー。文武両道。

- チェン・ダーウェイ大尉：ワン・リーホン（咲野俊介）

- 中国人民解放軍情報部大尉。

- チェン・リエン：タン・ウェイ（大坂史子）

- ダーウェイの妹で、中国のネットワークエンジニア。

- キャロル・バレットFBI捜査官：ヴィオラ・デイヴィス（上村典子）
- マーク・ジェセップFBI捜査官：ホルト・マッキャラニー（山野井仁）
- アレックス・トラン刑事：アンディ・オン

- 香港警察の刑事。

- エリアス・カサール：リッチー・コスター（及川ナオキ）

- サイバーテロ集団の幹部。

- サダック：ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン

- サイバーテロ集団の首領、ハッカー「ブラックハット」。

- リッチ・ドナヒューNSA局員：ウィリアム・メイポーザー

製作の背景

マイケル・マン監督は、エキゾチックなアジアの雰囲気と洗練されたコンピューターの世界を融合させたサスペンスアクション映画を構想していました。この着想は、イラン核施設へのサイバー攻撃「スタックスネット」に関する文献から得ています。脚本にはモーガン・デイヴィス・フォールを迎えましたが、彼の多忙さから脚本完成まで3年半を要しました。製作開始時、仮題は「サイバー」とされていました。

技術指導と役作り

コンピューター関連の技術指導には、元ハッカーのケビン・ポールセン、クリストファー・マッキンリー、FBIサイバーチーム出身のマイケル・パニコが参加しました。彼らは、映画によくある大袈裟な演出を避け、現実的な描写を追求しました。マイケル・マン監督は、登場人物のバックグラウンドを綿密に作り込み、俳優たちの役作りを徹底しました。主人公のハサウェイには、『シカゴのサウスサイド出身の鉄鋼労働者の息子』という設定が与えられ、クリス・ヘムズワースはシカゴで溶鉱炉の仕事を体験し、シカゴ訛りを習得しました。また、ステートヴィル刑務所を訪れ、囚人たちの様子を観察しました。他のキャストも、ハッキングの専門用語や操作手順を学び、FBI捜査官役のヴィオラ・デイヴィスは女性捜査官と行動を共にし、所作を学びました。

公開と興行成績

タイトルは「ブラックハット」と決定し、2015年1月に公開されました。しかし、クリント・イーストウッド監督の「アメリカンスナイパー」などの強力な競合作品の影響もあり、興行成績は振るいませんでした。2,500館以上で公開されたものの、2週間後にはわずか236館に減らされました。海外でも興行成績は低迷し、オーストラリアやベルギーでは劇場公開が見送られました。また、中国での公開も許可されませんでした。最終的な収益は製作費の70万ドルに対し19万ドルと、マイケル・マン監督にとって最も興行成績の低い作品となってしまいました。

撮影場所

撮影はロサンゼルス、香港、クアラルンプール、ジャカルタの4都市、計276箇所で行われました。香港では、油麻地、石澳、荃湾排水トンネルなどが使用されました。特に荃湾排水トンネルでは、排水口の隣にコンテナヤードのセットを作り、銃撃戦のシーンが撮影されました。香港島では、恒生銀行の前で5晩に渡り撮影が行われました。爆発シーンはインドネシアで撮影され、マレーシアの特殊効果会社がデジタル合成しました。クライマックスのニュピ祭のシーンは、ジャカルタのバンテン広場で3千人のエキストラを動員して撮影されました。撮影は2ヶ月で完了し、マイケル・マン監督は全編デジタルカメラで撮影しました。

音楽

音楽担当はハリー・グレッグソン＝ウィリアムズですが、マイケル・マンはアッティカス・ロスやマイク・ディーンにも並行して作業させました。ウィリアムズは90分ものスコアを作成しましたが、実際に使用されたのは断片的な部分のみでした。また、ライアン・エイモスの「エリジウム」のオリジナルサウンドトラックも使用されました。

その他

「ブラックハット」とは、悪意のあるコンピューターハッカーを意味する俗語で、西部劇に登場する黒い帽子を被った悪役が由来です。ニコラス・ハサウェイの人物像は、実在のハッカー、マックス・バトラーがモデルとなっています。また、コード解析シーンでモニターに表示される意味不明な文字は、フランス小説「O嬢の物語」の一節を逆さにタイプしたものです。

外部リンク

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