ブラックバーン ファイアブランド

B.17 ファイアブランド (Blackburn B.17 Firebrand)

B.17 ファイアブランドは、第二次世界大戦中にイギリスのブラックバーン社によって開発され、イギリス海軍航空隊で使用された艦上戦闘機です。ファイアブランドという名前は「火付け役」を意味し、開発社内ではB.17という名称が使われていました。当初の設計は艦上戦闘機でしたが、後に艦上戦闘雷撃機に再設計されたことで、珍しい運用形態となりました。

概要と開発の経緯

イギリス海軍は1939年に仕様書N.9/39を発行し、複座戦闘機であるフルマーに代わる新戦闘機の開発を求めました。この時期、フルマーは着艦能力に課題を抱え、艦載機としての適正もありませんでした。そのため、ブラックバーン社は新たな戦闘機の開発を請負うことになりました。この新機体は、1940年に発行された仕様書N.11/40に基づき、原型機が製造されることになります。

しかし、ファイアブランドの開発は非常に遅れ、多くの試作機が試験を受けるも思うようには進展しませんでした。1942年の初飛行時には、既に当初予定されたエンジンが軍の他のプロジェクトに回されることになり、最終的にはブリストル製のセントーラスエンジンに変更されました。この設計変更により、開発はさらに遅延し、ファイアブランドは戦闘機ではなく艦上戦闘雷撃機としての機能へと方向転換されました。これは他に運用されていたシーファイアの性能に影響を受けたためとされます。

結局、Mk.I型はわずか9機しか生産されず、特有のデザインや構造が施されました。これに伴い、プロトタイプには初めて外部の対気速度計が装備され、パイロットは着陸時にコクピット内の計器を見る必要が無いという利点がありました。

TF型の発展

ファイアブランドの異なるバージョンであるTF.Mk.II型は、主脚の幅を変更することで魚雷を搭載可能としたモデルで、1943年3月に初飛行を果たし、12機が生産されました。このモデルもセイバーエンジンを使用しましたが、後のTF.Mk.III型ではエンジンがセントーラスVIIに改められるも、トルクが大きく安定性に課題が残りました。

生産数は限定的で、最終的にTF.Mk.4型とその後のTF.Mk.5型が開発され、68機が生産されましたが、この時期には実際の戦闘で使用される機会がほとんど無くなっていました。

戦果と運用

残念ながら、ファイアブランドは第二次世界大戦中に必要とされる迅速な運用ができず、完成時期には戦闘が終息を迎えつつありました。初期の運用部隊である第708飛行隊は1944年に結成されましたが、実際には他の航空機にその役目を譲ることが多かったのです。

全体として、ファイアブランドは冗長な設計変更と遅延が重なり、戦果を上げることもできないまま、多くの機体が失われていきました。最終的には、1953年頃には役目を終え、ほとんどの機体が廃棄される運命にありました。

生産数の不明確さ

最終生産台数については、冗長な設計変更や様々な改修により正確な数値が不明です。一般的な見積もりでは、プロトタイプから567機程度とされますが、詳細な確認が困難で、多くの数字が報告されています。最も広く認識されている数字は220機程度ですが、正確な生産数は依然として謎に包まれています。

このように、B.17ファイアブランドは歴史の中で多くの課題と試練を経た機体であり、技術革新と軍事戦略の変化を反映した重要な存在でした。

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