ブラック・マーケット

ウェザー・リポートのスタジオ録音盤としては6作目にあたるアルバム『ブラック・マーケット』は、1976年に世に送り出されました。この作品は、バンドの中心人物であるジョー・ザヴィヌルとウェイン・ショーターが自らプロデュースを手がけています。

録音は1975年の12月に行われ、翌1976年の4月にコロムビア・レコードから発売されました。時を経て1991年には、同じくコロムビアよりデジタルリマスターされたCDとして改めてリリースされています。

『ブラック・マーケット』は、それまでにウェザー・リポートが培ってきた音楽的要素が見事に融合し、一つの完成形として結実した内容と言えます。同時に、このアルバムは、当時バンドに加わったばかりの革新的なベーシスト、ジャコ・パストリアスが初めてそのプレイを披露した記念すべき作品でもあります。ただし、彼の参加は録音セッションの終盤だったため、全ての楽曲ではなく、このアルバムに収録された全7曲のうち2曲での演奏に留まっています。その他の楽曲のベースは、前任者であるアルフォンソ・ジョンソンが担当しており、本作は新旧のベーシストのサウンドが共存する形となっています。

本作のサウンドは、アフリカ音楽からの強いインスピレーションが随所に感じられ、後の音楽シーンで「ワールド・フュージョン」と呼ばれるジャンルを予見させるかのような演奏が展開されています。

収録曲の中で特筆すべきは、2曲目に収められている「キャノン・ボール」です。この曲は、ザヴィヌルが過去に師事し、偉大なジャズ・ミュージシャンであったジュリアン・キャノンボール・アダレイに捧げられたものです。アダレイは本作の録音が行われる約4ヶ月前に他界しており、ザヴィヌルの追悼の念が込められています。

本作に参加したミュージシャンは以下の通りです。

ジョー・ザヴィヌル: ヤマハ・グランド・ピアノ、ローズ・ピアノ、アープ2600・シンセサイザー、オーバーハイム・ポリフォニック・シンセサイザー
ウェイン・ショーター: ソプラノサックス、テナーサックス、コンピュトーン・リリコン
アルフォンソ・ジョンソン: エレクトリックベース（ジャコが参加した2曲を除く）
ジャコ・パストリアス: フレットレス・ベース（2曲目、6曲目）
ナラダ・マイケル・ウォルデン: ドラム（1曲目、2曲目）
チェスター・トンプソン: ドラム（1曲目、3曲目から7曲目）
アレックス・アクーニャ: コンガ、パーカッション（2曲目から5曲目、7曲目）
ドン・アライアス: パーカッション（1曲目、6曲目）

『ブラック・マーケット』は、ウェザー・リポートがその音楽性をさらに発展させ、新たな時代のフュージョン・サウンドを切り開いていく上で、極めて重要なターニングポイントとなった作品と言えるでしょう。

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