ブラフマンの埋葬

ブラフマンの埋葬

小川洋子による小説『ブラフマンの埋葬』は、2004年に『群像』に掲載され、同年講談社から単行本が刊行されました。装幀は十河岳男 (K2)、装画は山本容子が担当し、同年に第32回泉鏡花文学賞を受賞しています。2007年には講談社文庫版も刊行されました。

あらすじ

物語は、バイオリニスト、映画監督、画家など、様々なアーティストが創作活動を行うための場所、〈創作者の家〉を舞台に展開されます。主人公である〈僕〉は、その家の管理人を務めています。〈創作者の家〉は、村の中心部から少し離れた田園地帯に位置し、古い農家をリフォームした建物です。

初夏のある日、〈僕〉の家の庭に、傷を負った痩せた小動物が現れます。その小動物は、やがて〈創作者の家〉に工房を持つ碑文彫刻師によって「ブラフマン」と名付けられ、〈僕〉はブラフマンを飼い始めることになります。ブラフマンの傷はみるみるうちに癒え、〈僕〉はブラフマンの観察記録をつけ始めます。

主な登場キャラクター

ブラフマン: 胴の1.2倍ほどの長さの尻尾を持つ小動物。尻尾は自在に動き、足の裏には5つの肉球と水かきがあります。
〈僕〉: 物語の語り手で、〈創作者の家〉の管理人です。
* 碑文彫刻師: 〈創作者の家〉に工房を持つ職人。

書評

「WEB本の雑誌」では、本作について「小川洋子という作家と他の文筆家を分けていると思われるのが、出番は少ないが印象的なレース編み作家とホルン奏者の描写」と評されています。特にレース編み作家の描写は、時に冷たく、また時には限りなく優しいと評され、他の作家には描けない表現だと評価されています。また、「1つ1つのエピソードが目に浮かんで、とにかく『美しい世界』の一言に尽きます。言葉の美しさをぎゅっと濃縮して閉じ込めた結晶がきらきら輝いています」と、言葉の美しさを称賛する書評も掲載されています。

『ブラフマンの埋葬』は、小川洋子ならではの繊細な文章と、美しい情景描写が印象的な作品です。静謐な雰囲気の中で、生命の温かさや、人間と動物との心の交流が描かれています。ぜひ手に取って、その美しい世界に浸ってみてください。

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