肉球

肉球（にくきゅう）について

肉球は主に食肉目の動物の足裏に見られる、無毛で盛り上がった部分を指します。この部分の正式名称は蹠球（しょきゅう）ですが、掌球（しょうきゅう）との混同を避けるため、一般的には肉球と呼ばれています。英語では、肉球が並んでいる足を指して "paw"、個々の肉球を "pad" と区別しています。

肉球の構造

肉球は動物によって前足と後ろ足で異なる名称が付けられています。

前足

• - 掌球（しょうきゅう、metacarpal pad）：前足の裏、中央に位置する大きな肉球で、人間の掌に相当します。
• - 指球（しきゅう、digital pad）：掌球の外側に5つある肉球で、1つは他の4つと離れており、これは人間の親指に該当します。
• - 手根球（しゅこんきゅう、carpal pad）：掌球の上部にあり、人間の手首に相当する部分です。後ろ足には類似する肉球は存在しません。

後ろ足

• - 足底球（そくていきゅう、footpad）：後ろ足の裏にあり、狭義にはこの部分を蹠球と呼びます。
• - 趾球（しきゅう、digital pad）：足底球の外側に4つ並んだ肉球です。これらは触ったときに「ぷにぷに」とした特有の感触を持っています。

肉球の外側は角質層で覆われており、地面の突起物から足裏を守る役割を果たします。表面は顆粒状で滑り止めの効果があり、動物は安定して歩くことができます。肉球の内部は、弾性線維と脂肪組織が網目状になっており、中に衝撃を吸収する機構があります。さらに、周囲には発達した汗腺があり、体温調整などに寄与しています。

個体ごとに色や模様、形状、柔らかさが異なり、その特性は生息環境に応じて変化します。例えば、野生のネコは屋内飼いのネコに比べて肉球が厚く、硬くなる傾向があります。また、多指症という珍しい形態的変異が見られる場合、指球が通常よりも多く存在します。

肉球の役割

肉球は、獲物に近づく際に音を立てずに移動できるように足音を消す機能があります。また、樹上から飛び降りる際の衝撃を和らげる役割も果たしています。特にネコの手根球には2〜3本の毛が生え、歩行中に周囲の状況を感知する触覚として機能します。

興味深いことに、アシカやセイウチなどの海生哺乳類には肉球が存在しません。これらの動物は水中で生活するため、肉球の機能が必要ないからです。

肉球を持つ動物

肉球は主に以下の動物に見られます：

• - ネコ科の動物
• - イヌ科の動物
• - クマ科の動物
• - アライグマ
• - イタチ科の動物
• - 一部のネズミ目の動物
• - 有袋類の動物（ウォンバット、フクロミツスイ等）

意匠としての肉球

長い間人間と関わってきた動物、特にネコをモチーフとした商品が多数存在します。中にはネコ本体ではなく、肉球を意匠として取り入れた商品もあり、その特有の手触りが人々に「癒やし」を提供することがあります。これを再現した玩具や製品も市販されています。肉球はただの身体の一部ではなく、文化やデザインの一端を担う存在となっています。

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