ブリストル ジュピター

ブリストル ジュピター

ブリストル ジュピター（Bristol Jupiter）は、イギリスのブリストル飛行機が開発した、単列9気筒の空冷星型エンジンです。このエンジンは、第一次世界大戦の終息を受けて1918年に設計され、その後の改修や性能向上を重ねることで、非常に優れた完成度を誇っています。1920年代から1930年代にかけて、多くの航空機に搭載され、また複数の国でライセンス生産されるなど、広く普及しました。

開発の背景

ジュピターは、当初コスモス・エンジニアリング社の技士ロイ・フェデンによって設計されましたが、同社は1920年に経営破綻します。コスモスはその後、ブリストルに買収され、エンジンの製造が引き継がれました。このエンジンは1918年から1930年まで生産され続け、信頼性の高いエンジンとして評価されました。

設計には当時の特徴として、シリンダー一つあたり4つのバルブを備えている点がありました。しかし、最初の設計ではシリンダーの冷却性能に課題があり、排気バルブの損耗が激しいものでした。これに対処するため、ブリストルは改良に取り組み、アルミニウム合金を使用した新しいシリンダー構造を採用しました。この改良版は冷却性能を向上させる結果となりました。

エンジンの性能と影響

ジュピターはその後、1925年から新たに開発されたマーキュリーエンジンに技術がフィードバックされ、更なる進化を遂げましたが、ジュピター自体は長い間使用され続けました。特にハンドレページ社のHP.42ハンニバル旅客機に搭載されたことで、民間航空機での知名度を高めました。

防衛用途に関しては、ブルドッグ戦闘機などの軍用機にも搭載されたものの、民間機での利用が多かったことが特徴です。さらに、ジュピターは14ヶ国でライセンス生産され、エンジン技術の発展に寄与しました。日本では1924年に中島飛行機がライセンスを取得し、その後の国産エンジンの基礎となりました。

性能諸元

ジュピターの主な性能は以下の通りです。

• - タイプ：空冷星型単列9シリンダー
• - ボア×ストローク：146 mm × 190 mm
• - 排気量：28.7 L
• - 重量：330 kg
• - バルブ数：一シリンダーあたり吸気×2, 排気×2
• - 圧縮比：5
• - 離昇出力：580 hp @ 1,950 rpm

ライセンス生産の国々

ジュピターは、以下の国々でライセンス生産が行われました。

• - イタリア：アルファロメオによるアルファ・ロメオ 126-RC35
• - ソビエト連邦：シュベツォフによるM-22
• - ドイツ：ジーメンス・ハルスケがブラモ 323として生産
• - 日本：中島飛行機が寿エンジンとして引き継ぐ
• - フランス：ノーム・エ・ローヌ社による生産

このように、ブリストル ジュピターは航空機エンジンの歴史において重要な地位を占めており、その影響は現在にまで及んでいます。

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