ブリティッシュ・エアウェイズ5390便不時着事故

1990年 6月10日、イギリスで発生したブリティッシュ・エアウェイズ5390便不時着事故は、航空業界に衝撃を与える出来事となりました。事故の発生したブリティッシュ・エアウェイズ5390便は、イングランドのバーミンガム国際空港からスペインのマラガ空港に向かって運航されていました。

事故概要

定刻通りに離陸した5390便は、午前7時20分にバーミンガムを発ちました。機長ティム・ランカスターと副操縦士アラステア・アチソンは交代で操縦を行い、問題なく高度を上昇させていました。しかし、約13分後の7時33分、突如として客室で破裂音が響き、機長席側の窓ガラスが吹き飛びました。この瞬間、機長は半身が機外に吸い出され、そのまま操縦席に残る肩ベルトが引っかかるという危機的な状況となりました。

緊急事態発生

窓ガラスの脱落による急減圧が発生し、機内は混乱の渦に巻き込まれました。機長は345マイル毎時（約555キロ）という強風にさらされ、温度は-17℃、酸素も薄い中、生命の危機を迎えていました。副操縦士アチソンは、まず自動操縦を解除され混乱する機体を一手に引き受け、その間に客室乗務員たちは乗客を落ち着かせる対応に追われました。

機長が操縦桿に引っかかっていたため、クルーはできる限りのサポートを続けました。副操縦士は早急にサウサンプトン空港への緊急着陸の許可を得ますが、周囲の騒音により航空管制からの指示が聞き取れず、混乱が続きました。

救出活動とその後

緊迫した状況の中、最終的に5390便は無事にサウサンプトン空港に着陸しました。全ての乗客が無事に避難した後、機長の救出が行われ、重傷を負ったものの生存が確認されました。ランカスター機長は凍傷や骨折といった複数の怪我を負いましたが、運として奇跡的に命を取り留めました。客室乗務員も負傷しましたが、致命傷を負った者はいませんでした。

事故の原因

事故調査の結果、機長の窓ガラスが不適切に取り付けられていたことが分かりました。事故の27時間前に行われた窓ガラスの交換作業で、固定ネジに規格外のものが使用されていたため、取り付け部の強度が不足していたのです。これにより、内外の気圧差で窓ガラスが脱落してしまいました。

安全勧告

事故を受けて、ブリティッシュ・エアウェイズとイギリス民間航空局は、整備手順や監督制度の見直しを求める勧告を行いました。特に、整備士の再教育や、作業基準の厳守が重要視されました。

事故の影響

この事故は航空業界において、整備の重要性とリスク管理の再認識を促す重要な教訓となりました。また、類似の航空事故を防ぐための取り組みや、安全基準の向上にも繋がりました。実際、5390便のケースは後の航空機の設計や整備手順の改良に大きな影響を与えました。航空機の安全運航に関わる全ての関係者にとって、忘れてはならない重要な事件であると言えるでしょう。

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