ブリティッシュ・エアツアーズ28M便火災事故

1985年8月22日、イギリスのマンチェスター国際空港で発生したブリティッシュ・エアツアーズ28M便火災事故は、航空史に残る悲劇の一つです。この事故は、同空港を離陸しようとした28M便（ボーイング737-236型機、機体記号G-BGJL）で発生しました。

事故の概要

28M便は、乗員6名、乗客131名を乗せ、ギリシャのコルフ国際空港へ向かう予定でした。離陸滑走を開始した直後の午前6時12分、左エンジンが爆発するという衝撃的な事態が発生しました。操縦士は直ちに離陸を中止し、機体を誘導路へ移動させましたが、機体は激しく炎上しました。この火災により、乗員乗客合わせて55名が命を落とし、15名が重傷を負うという惨事となりました。

特筆すべきは、犠牲者の大半が焼死や火傷ではなく、有毒な煙を吸い込んだことによる窒息死であった点です。これは、火災そのものの危険性に加え、発生した煙の毒性が極めて高かったことを示しています。

事故原因の詳細

事故調査の結果、火災の直接的な原因は左エンジンの第9燃焼器の破損でした。この破損によって燃料タンクが損傷し、漏れ出した燃料に引火したことが判明しました。機体が停止した後も燃料漏れが続き、火は機体全体に燃え広がりました。

さらに、事故の被害を拡大させた要因として、操縦士の判断ミスが挙げられます。操縦士はエンジン爆発の衝撃音をタイヤのパンクと誤認し、ブレーキを強くかけるのが遅れました。この判断の遅れが、機体の停止を遅らせ、被害を拡大させた一因となりました。

また、煙によって機内は視界が悪くなり、乗客は非常口の開け方が分からず混乱しました。加えて、航空会社側が脱出時のパニックを十分に想定していなかったことも、犠牲者を増やした要因の一つです。客室とギャレーを繋ぐ通路が狭く、避難しようとする乗客が殺到し、ボトルネックとなってスムーズな脱出を妨げたのです。

この状況を検証するために、事故後に同様の脱出テストが実施されました。「早く脱出できたものには賞金を与える」という条件で試みられたものの、結果は本件事故と大差なく、脱出の難しさが浮き彫りになりました。

事故から得られた教訓

ブリティッシュ・エアツアーズ28M便の火災事故は、航空機の安全対策における多くの教訓を残しました。特に、以下の点が重要です。

エンジン故障時の適切な対応手順の徹底
機内での避難経路の再検討と改善
非常時の乗客誘導に関する訓練の強化
パニック発生を想定した避難計画の策定
機体設計における安全性の向上

この事故を契機に、航空業界では安全対策が大幅に見直されることになりました。また、脱出時の乗客の心理状態や避難行動を考慮した訓練や設備の改善が進められました。航空機の安全は、常に最新の技術と訓練によって確保されるべきであり、過去の事故から得られた教訓を未来に活かすことが重要です。

この事故は、航空事故の悲惨さを改めて浮き彫りにするとともに、安全に対する意識を新たにするための重要な教訓を与えてくれました。二度とこのような悲劇を繰り返さないために、私たちは過去の教訓を深く胸に刻み、安全な空の旅を追求し続ける必要があります。

関連事故

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* 羽田空港地上衝突事故

その他

この事故は、カナダのドキュメンタリー番組「メーデー!:航空機事故の真実と真相」の第7シーズン第1話「PANIC ON THE RUNWAY（日本語版タイトル：ブリティッシュ・エアツアーズ28便）」で取り上げられています。

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