ブリュ物語

『ブリュ物語』（Roman de Brut または Brut）は、12世紀に詩人ウァース（ワース）によって著された、グレートブリテン島の歴史を題材とする韻文作品です。この作品は、アングロ・ノルマン語（アングロ・フランス語）で書かれており、14,866行からなる長編作品です。

成立と背景
『ブリュ物語』は、ジェフリー・オブ・モンマスの『ブリタニア列王伝』（Historia Regum Britanniae）を基にしています。1150年頃に執筆が開始され、1155年に完成したと考えられています。この作品は、アングロ・ノルマン人の新たな領土の伝説や歴史に関心を持つ聴衆に向けて書かれました。そのため、アーサー王の物語を始めとするブリテンの歴史が、神話に登場するトロイのブルータスまで遡って語られています。

内容と特徴
『ブリュ物語』は、ウァースの作品の中でも最も人気が高く、30以上の写本や断片が現存しています。この作品は、ブリテンの歴史を叙事詩的に描いており、アーサー王伝説を広める上で重要な役割を果たしました。物語は、トロイア戦争の英雄アイネイアスの曾孫であるブルータスが、ブリテン島に到着し、島を支配するまでの伝説から始まります。その後、ローマ帝国による侵略や、アーサー王の活躍、そしてその後のサクソン人による侵攻までが描かれています。

影響と後世への継承
『ブリュ物語』は、後世の文学作品にも大きな影響を与えました。特に、ラヤモン（Layamon）がこの作品を基にして、自身の手による『ブルート（Brut）』を執筆したことは特筆に値します。また、この作品は、中世におけるブリテンの歴史観や伝説を形作る上で、重要な役割を果たしました。

関連事項
この作品に関連する事項として、以下のものが挙げられます。

ルー物語：『ブリュ物語』の基となった作品の一つです。
アーサー王伝説：『ブリュ物語』で重要な役割を果たす伝説です。
* ブルターニュもの：『ブリュ物語』が成立した背景となる地域や文化です。

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