ブリンズリー・シュウォーツ

概要

ブリンズリー・シュウォーツは、1969年にイングランドで結成されたロックバンドです。1970年代前半に隆盛を極めたパブロック・ムーブメントにおいて、中心的なバンドの一つとして知られています。バンド名はギタリストであるブリンズリー・アーンスト・ピーター・シュウォーツ（1947年5月25日生）に由来しており、オリジナルメンバーにはシュウォーツに加え、ベーシスト兼ヴォーカリストのニック・ロウ、キーボーディストのボブ・アンドリュース、ドラマーのビリー・ランキンが名を連ねていました。1975年に解散しましたが、その後のメンバーの活動や、時代を超えた楽曲の魅力により、現在も根強い人気を誇っています。

音楽性

結成当初、バンドはザ・バンドなどに影響を受け、カントリーロックの要素を強く押し出したサウンドを展開していました。しかし、活動の中期から後期にかけて、ニック・ロウのソングライティング能力が大きく開花するにつれて、彼らの音楽性は変化を遂げます。よりタイトでストレートなパブロックや、ポップなメロディを持つパワー・ポップ的なサウンドへと進化し、後の多くのアーティストに影響を与えました。

来歴

バンドは1969年に活動を開始し、翌1970年9月にはオーディションによりギタリストのイアン・ゴムが加入し、5人編成となりました。同年、ユナイテッド・アーティスツよりファーストアルバム『ブリンズリー・シュウォーツ』を発表します。このアルバムのプロモーションとして、彼らは大胆な試みに出ます。イギリスの音楽プレス関係者を大量にニューヨークへ招待し、フィルモア・イーストでヴァン・モリソンの前座を務めたのです。しかし、フライトの遅延によるリハーサル時間の不足など、様々な不運が重なり、公演は期待外れの結果に終わります。バンドはこの失敗によって多額の負債を抱え、この出来事は後に音楽業界で「フィルモア・ハイプ」として語り継がれることとなりました。

初期の躓きにも関わらず、ブリンズリー・シュウォーツは精力的なライブ活動を続けます。特にロンドンのパブを中心に演奏を重ねることで、優れた楽曲と安定した演奏力を持つライブバンドとして徐々に評価を高めていきました。1970年にはセカンドアルバム『ディスパイト・イット・オール』をリリース。1972年には『シルヴァー・ピストル』、そして『ナーヴァス・オン・ザ・ロード』といった作品を発表し、着実にファンを増やしていきます。

1974年6月には、バンドの代表曲の一つとなるシングル「ピース、ラヴ・アンド・アンダースタンディング」を発表。この曲は後にエルヴィス・コステロがカバーし、世界的に有名になります。同年には、名プロデューサーであるデイヴ・エドモンズをプロデューサーに迎えたアルバム『ニュー・フェイヴァリッツ・オブ・ブリンズリー・シュウォーツ』をリリース。洗練されたポップなサウンドで高い評価を得ました。

しかし、バンドは1975年に解散を発表し、その活動に終止符を打ちます。解散後もメンバーは音楽活動を続けました。特にニック・ロウは、ソロアーティストとしてヒット曲を出し、エルヴィス・コステロをはじめとする多くのアーティストのプロデュースを手がけ、名プロデューサーとしての地位を確立しました。また、ブリンズリー・シュウォーツとボブ・アンドリュースは、1970年代後半にグラハム・パーカー率いるバックバンド、ルーモアのメンバーとして活躍し、その手堅い演奏でパーカーの音楽を支えました。

ディスコグラフィ

スタジオ・アルバム

• - 『ブリンズリー・シュウォーツ』 - Brinsley Schwarz (1970年)
• - 『ディスパイト・イット・オール』 - Despite It All (1970年) ※旧邦題『ブリンズレー・シュワルツ登場』
• - 『シルヴァー・ピストル』 - Silver Pistol (1972年) ※旧邦題『銀の拳銃』
• - 『ナーヴァス・オン・ザ・ロード』 - Nervous on the Road (1972年) ※旧邦題『大通りの臆病者』
• - 『プリーズ・ドント・エヴァー・チェンジ』 - Please Don't Ever Change (1973年) ※旧邦題『ゆるぎない心』
• - 『ニュー・フェイヴァリッツ・オブ・ブリンズリー・シュウォーツ』 - The New Favourites of... Brinsley Schwarz (1974年)
• - 『イッツ・オール・オーヴァー・ナウ』 - It's All Over Now (2017年) ※1974年録音

ライブ・アルバム

• - 『ライヴ・フェイヴァリッツ』 - Live Favourites (2015年)
• - 『ライヴ・アーカイヴ Vol.1 ライヴ・イン・ティルブルフ』 - Live Archive Volume One Tilburg (2019年)

コンピレーション・アルバム

• - 『オリジナル・ゴールデン・グレイツ』 - Original Golden Greats (1974年)
• - 『15 ソーツ』 - 15 Thoughts of Brinsley Schwarz (1978年)
• - 『サレンダー・トゥ・ザ・リズム - ベスト・オブ・ブリンズリー・シュウォーツ -』 - Surrender to the Rhythm (1991年)
• - Nervous On The Road/The New Favourites Of... Brinsley Schwarz (1995年)
• - Hen's Teeth (1998年) ※シングル集
• - Rarities (2000年)
• - 『ピース、ラヴ・アンド・アンダースタンディング』 - What IS So Funny About Peace Love & Understanding? (2001年) ※BBC録音
• - 『恋するふたり』 - Cruel to Be Kind (2004年) ※BBC録音

参加コンピレーション・アルバム

• - Glastonbury Fayre (1972年)
• - Greasy Truckers Party (1972年)

バック・バンドとして参加したアルバム

• - 『アーニー・グレアム』 - Ernie Graham (1971年) ※アーニー・グレアムのソロ唯一作
• - 『ワンス・イン・ア・ブルー・ムーン』 - Once in a Blue Moon (1973年) ※フランキー・ミラーのデビュー・アルバム
• - 『ひとりぼっちのスタジオ』 - Subtle as a Flying Mallet (1975年) ※デイヴ・エドモンズのアルバム。ライブ・トラックのみ

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