ブルー・プラーク

ブルー・プラーク：イギリスの歴史を語る青い看板

イギリスの街角で見かける直径約19インチの青い円盤。これは「ブルー・プラーク (blue plaque)」と呼ばれる史跡案内板で、その場所と関わりの深い著名な人物や歴史的出来事を後世に伝える役割を担っています。単なる記念碑ではなく、建物の歴史的な文脈を語る重要な標識と言えるでしょう。

ブルー・プラークの歴史：1867年から現在まで

ブルー・プラークの歴史は、1867年に詩人バイロンの住居にプラークを設置する計画から始まりました。当初は英国王立人文科学協会が管理していましたが、その後、ロンドン・カウンティ・カウンシル、グレーター・ロンドン・カウンシルと移行し、1985年以降はイングリッシュ・ヘリテッジがその役割を担っています。設置対象地域も、当初はロンドンに限られていましたが、1998年からはイギリス全土に拡大されました。

初期のプラークはこげ茶色でしたが、1937年に青色に変更され、1939年からは現在のデザインにほぼ落ち着きました。現在では800枚以上のブルー・プラークがイギリス各地に設置され、その数は増え続けています。

ブルー・プラークの選定基準：厳格な審査

イングリッシュ・ヘリテッジは1954年にブルー・プラークの選定基準を制定しました。対象となるのは、没後20年以上または生後100年以上経過した人物で、「人類の繁栄と幸福に重要かつ積極的な貢献」をし、「非凡かつ傑出した個性を持った」人物です。国民の認知度も重要な要素となります。原則として1人1箇所にしか設置されませんが、歴史上重要な人物については複数の場所に設置されていることもあります。毎年約20枚の新規設置が続けられています。

デザインと材質：多様性

ブルー・プラークは、青く塗装された陶器や樹脂製の円盤が一般的ですが、材質やデザインは設置団体や時代、人物の職業などによって異なります。厳密には「青い板」だけではありません。

公的機関以外による設置：地域住民の取り組み

イングリッシュ・ヘリテッジ以外にも、市民団体、地方自治体、郷土史研究団体などがブルー・プラークを設置しています。中には「グリーン・プラーク」を設置するウェストミンスター区や、コメディアンを対象とした活動を行う団体などもあります。さらに、2003年にはサザーク区が生存する人物にもブルー・プラークを贈る活動を開始しました。

興味深い事例：架空の人物や日本人

ブルー・プラークには、シャーロック・ホームズのように架空の人物を対象としたものも存在します。ベーカー街221Bには、彼の住居を示すプラークが設置されています。日本人では、夏目漱石がロンドン留学時代に過ごした最後の下宿にブルー・プラークが設置されています。

まとめ：街の歴史を語る、青い証

ブルー・プラークは、単なる案内板ではなく、イギリスの歴史と文化を語る象徴的な存在です。その選定基準、デザイン、歴史、そしてユニークな事例を通して、イギリスの街並みを彩るブルー・プラークの魅力と意義を理解することができるでしょう。今後も、新たなブルー・プラークが設置され、イギリスの歴史が刻まれていくことでしょう。

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