イングリッシュ・ヘリテッジ

イングリッシュ・ヘリテッジ：イングランドの歴史的遺産を守る組織

イングリッシュ・ヘリテッジは、イングランドにおける歴史的建造物や遺跡の保護を主な任務とする組織として、英国政府によって設立されました。その活動範囲は非常に広く、古代の遺跡であるストーンヘンジから、産業革命期の産業遺産であるアイアンブリッジまで、多岐にわたる歴史的建造物を対象としています。

組織の役割と活動

同組織の主な役割は、イングランドの歴史的遺産の保護、維持、そしてその価値の啓発です。具体的には、以下の様な活動を行っていました。

歴史的建造物の保護: 対象となる建造物の保全、修復、そして適切な管理を推進します。
助言と登録: 歴史的建造物や遺跡の登録、保護に関する助言を政府機関や個人所有者に対して行います。指定建造物（Listed building）や指定遺跡（Scheduled Ancient Monument）の登録手続きも担っていました。
連携と協力: 建造環境の保護を目的として、イングリッシュ・ネイチャーなどの公的自然保護機関と緊密に連携し、文化・メディア・スポーツ大臣への助言などを通して保護政策の推進に貢献していました。
施設の運営: いくつかの歴史的建造物を直接所有・運営し、一般公開することで、歴史的遺産への理解を深める機会を提供していました。私有の建造物についても、所有者と協力しながら保護活動を展開していました。

財政と運営

イングリッシュ・ヘリテッジは特殊法人として運営され、英国政府から予算が支出されていました。政府からの財政負担を軽減するため、一部の施設では入場料を徴収していました。

組織の再編

2015年4月1日、イングリッシュ・ヘリテッジは二つの組織に分割されました。一つは、法令保護機能を継承したヒストリック・イングランドで、もう一つは、歴史的遺産を運営する慈善団体であるイングリッシュ・ヘリテッジ・トラストです。この再編に伴い、ロゴも刷新されました。

類似団体との比較

イングリッシュ・ヘリテッジと類似した目的を持つ団体として、ナショナル・トラストが挙げられます。しかし、ナショナル・トラストは政府の関与を受けない私的団体である点が大きな違いです。

地域ごとの対応組織

イングランド以外の地域においても、歴史的遺産の保護を担う組織が存在します。例えば、ウェールズではCadw、スコットランドではHistoric Scotland、北アイルランドではEnvironment and Heritage Service、そしてマン島ではManx National Heritageがそれぞれ該当します。

ブルー・プラーク計画

1986年以来、イングリッシュ・ヘリテッジはロンドンにおけるブルー・プラーク計画の管理運営を行っていました。ブルー・プラークは、著名な人物が住んでいた家や歴史的な出来事があった場所に設置される標識です。当初はロンドン中心でしたが、リバプールやバーミンガムなどにも設置されましたが、その後計画は縮小されました。

結論

イングリッシュ・ヘリテッジは、イングランドの歴史的遺産の保護において重要な役割を果たした組織です。その活動は、歴史的建造物の保護にとどまらず、政策提言や教育啓発にも及び、イングランドの歴史と文化の継承に大きく貢献しました。組織の再編後も、その活動はヒストリック・イングランドとイングリッシュ・ヘリテッジ・トラストによって引き継がれ、現在もイングランドの歴史的遺産は大切に守られています。

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