ブレスラウ条約

ブレスラウ条約（1742年）

ブレスラウ条約は、1742年6月11日にブレスラウ（現在のポーランド領ヴロツワフ）で締結された、オーストリア継承戦争におけるプロイセン王国とオーストリア大公国（ハプスブルク帝国）との間の講和条約です。同年7月28日には、ベルリンで同内容の条約が最終合意として再締結され、これはベルリン条約と呼ばれます。これらの条約によって、第一次シュレージエン戦争は終結しました。

条約締結の背景

開戦当初、オーストリアのマリア・テレジアはシュレージエンをプロイセンに渡すまいと抵抗しましたが、コトゥジッツの戦いでプロイセン軍に敗北。さらに、ベーメンにおけるフランス軍の撃退にも失敗したことで、二正面作戦の困難さを痛感しました。また、オーストリアは同盟国であるイギリスから、プロイセンとの講和とフランスへの戦力集中を強く要求されていました。イギリスからの多大な資金援助を受けていたオーストリアは、その要求を無視し続けることができませんでした。

条約の内容

ブレスラウ条約（およびベルリン条約）の主な内容は以下の通りです。

1. プロイセンの対オーストリア戦争からの離脱: プロイセンはオーストリアとの戦争から手を引くこと。
2. シュレージエンの割譲: オーストリアは、シュレージエンのほぼ全域とグラッツ伯領をプロイセンに割譲すること。国境はズデーテン山地とオッパ川と定められました。ただし、テシェン公領、イェーゲルンドルフ公領、トロッパウ公領の大半、ナイセ公領の一部はオーストリア領シュレージエンとしてオーストリアに残されました。
3. 債権の引き受け: イギリスとオランダが有していたシュレージエンの税収を担保とするオーストリアの債権、約170万ターラー分をプロイセンが引き受けること。
4. 皇帝選挙での投票: プロイセンは、次の神聖ローマ皇帝選挙においてフランツ1世に投票すること。

条約の影響

ブレスラウ条約によって、プロイセンはシュレージエンという重要な地域を獲得し、その勢力を拡大しました。この領土獲得は、プロイセンがヨーロッパの大国としての地位を確立する上で重要な一歩となりました。一方、オーストリアはシュレージエンを失ったことで国力を削がれましたが、その後の外交努力によって勢力の挽回を図りました。

第一次シュレージエン戦争終結後も、オーストリアとプロイセンの関係は緊張状態が続きました。両国は、その後の第二次、第三次シュレージエン戦争（七年戦争）でも激しく争うことになります。

参考資料

林健太郎、堀米雇三 編『世界の戦史6 ルイ十四世とフリードリヒ大王』（人物往来社、1966年）
久保田正志『ハプスブルク家かく戦えり ヨーロッパ軍事史の一断面』（錦正社、2001年）
Browning, Reed. The War of the Austrian Succession, （New York, St Martin's Press, 1993）
Carlyle, Thomas. History of Friedrich II, PEACE OF BRESLAU

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