オーストリア大公国

オーストリア大公国：ハプスブルク家の隆盛と帝国への道

オーストリア大公国は、現在のオーストリア共和国の礎を築いた歴史的な国家です。神聖ローマ帝国という複雑な政治構造の中で、ハプスブルク家によって支配され、その発展は中世後期から近世にかけての中央ヨーロッパの歴史を語る上で欠かせません。

起源とハプスブルク家の台頭: オーストリア大公国の起源は、バーベンベルク家のオストマルク東方辺境伯領にまで遡ります。その後、オーストリア公国を経て、1457年にフリードリヒ3世によって正式にオーストリア大公国として確立されました。 この頃よりハプスブルク家は、神聖ローマ皇帝位を事実上世襲するようになり、帝国内での影響力を飛躍的に拡大していきました。

神聖ローマ帝国と大国への成長: オーストリア大公国は神聖ローマ帝国の一領邦ではありましたが、ハプスブルク家の権勢により、帝国内において圧倒的な力を持つようになりました。近世初期のヴェストファーレン条約によって神聖ローマ帝国が有名無実化すると、オーストリア大公国はハプスブルク家の基盤として、積極的に領土拡大を続けました。 ハンガリー、ボヘミア、そしてポーランド分割などを通じて、中東欧にまたがる広大な領土を支配する大国へと成長していったのです。

宗教と戦争: オーストリア大公国の歴史は、宗教対立と数々の戦争によって彩られています。三十年戦争ではカトリック勢力として参戦し、オスマン帝国とは幾度も激しく衝突しました。ウィーン包囲の成功は、オスマン帝国のヨーロッパ進出を食い止める上で重要な転換点となりました。 これらの戦争を通して、オーストリア大公国は領土を拡大し、同時にその国力と国際的地位を高めていきました。

主要な出来事:

1359年: ルドルフ4世がオーストリア大公を僭称。
1438年: アルブレヒト2世がローマ王に即位。ハプスブルク家の神聖ローマ皇帝位世襲の始まり。
1457年: フリードリヒ3世がオーストリア大公の称号を帝国法で正式に定める。
1526年: モハーチの戦いでハンガリー王が戦死。ハプスブルク家がハンガリー王位を獲得。
1529年、1683年: ウィーン包囲。オスマン帝国の侵攻を撃退。
1618-1648年: 三十年戦争。
1683-1699年: 大トルコ戦争。カルロヴィッツ条約により、ハンガリーなど広大な領土を獲得。
1701-1714年: スペイン継承戦争。
1740-1748年: オーストリア継承戦争。
1756-1763年: 七年戦争。
1772年、1795年: ポーランド分割。
1804年: フランツ2世がオーストリア皇帝を称し、オーストリア帝国が成立。
1806年: 神聖ローマ帝国解体。

オーストリア帝国への移行: 1804年、ナポレオンのフランス皇帝即位を機に、フランツ2世はオーストリア皇帝フランツ1世を称しました。そして1806年、神聖ローマ帝国が正式に解体されると、オーストリア大公国はオーストリア帝国の中核として新たな歴史を歩み始めました。 オーストリア大公国の歴史は、ハプスブルク家の権力とヨーロッパの勢力均衡の中で、複雑でドラマチックな展開を遂げたと言えるでしょう。その栄光と苦難の歴史は、現代のオーストリアにも深く刻まれています。


参考文献:

大津留厚『ハプスブルク帝国』（山川出版社＜世界史リブレット＞、1996年）
* 『ダイアローグ世界史年表』（第一学習社）

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