ブレディスローカップ

ブレディスローカップは、南半球のラグビー強豪国であるオーストラリアとニュージーランドが、ナショナルチームであるワラビーズとオールブラックスの間で争奪する、ラグビーユニオンにおける歴史ある賞です。両国のライバル関係を象徴するこのトロフィーは、1932年に正式に制定されました。

大会の起源と歴史

このカップの誕生は、1931年に遡ります。当時のニュージーランド総督を務めていたブレディスロー卿（Lord Bledisloe）が、両国間のラグビーを通じた親善促進を目的として、銀製のトロフィーを寄贈したのがきっかけです。このトロフィーを冠する大会として、ブレディスローカップが創設されました。大会の初回開催年については、1931年にオーストラリアがニュージーランド遠征を提案し、オークランドで行われた対戦をオーストラリア側が初年と位置づける一方、トロフィーが実際に授与された1932年にニュージーランドで行われた対戦をニュージーランド側が初年とする見解の違いがあります。

設立当初は、第二次世界大戦による中断を除き、およそ2年に一度のペースで、通常2試合から3試合で構成されていました。しかし、1982年からは毎年開催されることになり、より定期的な両国の対抗戦としての性格を強めました。歴史上初めてブレディスローカップがオーストラリアにもたらされたのは、1934年のことでした。

大会形式の変遷と現状

ブレディスローカップの大会形式は、時代の変化とともに幾度か見直されてきました。1982年から1995年までの期間は、年間1試合または3試合で開催され、この間ニュージーランドが優勢な成績を収めました。

1996年からは、ニュージーランド、オーストラリア、そして南アフリカ共和国の3カ国による対抗戦「トライネーションズ」（現在のザ・ラグビーチャンピオンシップ）の一部として実施されることになりました。この組み込みにより、ブレディスローカップの対戦が国際的なラグビーカレンダーの中でより重要な位置を占めるようになります。

1999年から2005年にかけては年間2試合形式が採用され、ここで現在の勝敗決定ルールに近い方式が確立されました。2試合で争われる場合、勝敗が1勝1敗となった際は、前年にカップを保持していた国がその権利を維持することになります。したがって、カップを奪還するためには、2試合とも勝利するか、1勝1引き分けの成績を収める必要があります。前年保持国は、1勝した時点でカップ防衛が確定します。

大会形式はその後も微調整が加えられ、2006年には再び年間3試合に戻りました。2007年はラグビーワールドカップ開催準備のため2試合制となりましたが、2008年から2010年にかけては、従来の3試合に加えて海外でのプロモーションを兼ねた1試合が追加され、計4試合が開催されました。この海外開催は、2008年の香港を皮切りに、2009年には日本の国立競技場、2010年には再び香港で行われました。2018年には横浜国際総合競技場でも開催されています。

2012年以降は、ザ・ラグビーチャンピオンシップの原則的な形式に合わせて、ブレディスローカップも通常2試合の結果で争われるようになりました。ただし、ワールドカップ開催年のようにザ・ラグビーチャンピオンシップの規模が縮小される場合は、ブレディスローカップも1試合で決定されることがあります（例：2015年、2019年、2023年）。

特筆すべき記録と近年の状況

ブレディスローカップの対戦は、しばしば大観衆を動員してきました。特に1999年と2000年にシドニーで行われた試合では、それぞれ10万人を超える観客数を記録し、ラグビーへの関心の高さを物語っています。

近年では、2020年に新型コロナウイルス感染症の世界的な影響を受けつつも4試合が開催されました。2021年も当初は3試合が予定されていましたが、渡航制限等の影響で2試合に短縮され、いずれの年もニュージーランドがカップ保持を継続しました。

2024年大会終了時点での通算成績を見ると、1932年の制定以降の全65回中、ニュージーランドが53回、オーストラリアが12回カップを保持しています。特に、トライネーションズが開始された1996年以降の29回に限定しても、ニュージーランドが24回、オーストラリアが5回と、ニュージーランドが圧倒的な強さを示しており、2003年から22年連続でカップ保持という記録を継続しています。これは、ブレディスローカップが両国のラグビーにおける現状を示す指標ともなっています。

このカップを巡る戦いは、単なる試合の勝敗を超え、両国のナショナルプライド、そしてラグビー文化における深い伝統と歴史を背負った、世界でも有数のラグビー対抗戦と言えるでしょう。

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