プジョー・305

プジョー305：フランスが生んだ小型車の傑作

プジョー305は、フランスの自動車メーカー、プジョー社が1977年から1989年にかけて製造した小型乗用車です。304の後継車種として登場し、プジョー車の車名に初めて「5」が用いられました。デザインは、プジョー社と長年契約関係にあったイタリアのカロッツェリア、ピニンファリーナが担当。404や504のような強烈な個性は持ちませんが、均整のとれた美しいサイドビューが魅力的な一台でした。

初期モデルは、204や304から受け継いだ、後傾配置のエンジン下にギアボックスを配置するアレック・イシゴニス方式のFWDレイアウトを採用。搭載エンジンは1300ccと1500ccのガソリンエンジンから始まり、後にディーゼルエンジンも追加されました。リアサスペンションを改良し、ラゲッジルームの拡大に成功したブレークモデルなどもラインナップに加わりました。ただし、304で人気を博したクーペやカブリオレモデルは、305シリーズでは登場しませんでした。

1982年には待望のビッグマイナーチェンジを実施。新しいXU系エンジンを搭載した1600ccのGTモデルが登場しました。このGTモデルでは、プジョーのFWD車としては初めて、エンジンとトランスミッションを一般的な横置き配置のダンテ・ジアコーサ式FWDレイアウトに変更。ダッシュボードやフロントマスクも刷新され、近代的なデザインへと進化を遂げました。さらに1984年には、同じエンジンレイアウトを採用した1900ccのGTXモデルと、フランス車として初めて4速オートマチックトランスミッションを搭載した1600ccモデルが追加されました。

305のシャシーとエンジンは、1982年にデビューしたシトロエンBXのベースにもなっています。BXは1980年代を代表するシトロエン車の傑作として知られており、その優れたハンドリングと乗り心地は、ハイドロニューマチックサスペンションの性能だけでなく、305のシャシーの優秀性にも大きく支えられていました。特に305GTXは、最高速度180km/hを誇り、優れた直進安定性によって、その速度をストレスなく長時間維持することが可能でした。

しかし、1986年にタルボブランドで発売される予定だった309、そして翌1987年には一回り大きな405が登場すると、305のラインナップは徐々に縮小していき、1989年には生産を終了しました。

日本市場においては、当時のプジョーディーラーであった西武自動車販売が604、505、504Dといった大型モデルの販売に注力していたこと、そして日本市場の需要を考えると4ATモデルは魅力的だったにも関わらず、正規輸入はされませんでした。305は、優れた走行性能と美しいデザインを持つ、フランスの小型車史における重要なモデルとして記憶されています。

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