プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター2

プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター2（PAI-2）

プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター2（英: plasminogen activator inhibitor 2、PAI-2）は、血液の凝固や溶解に関与する重要なタンパク質で、特に妊娠において重要な役割を果たします。PAI-2はセルピンスーパーファミリーに属し、主に血栓形成に寄与するプロテアーゼを不活化する機能を持ったセリンプロテアーゼインヒビターです。主に単球やマクロファージといった免疫細胞に多く存在し、その構造は約60 kDaの細胞外型と約43 kDaの細胞内型の2つの形態で表れます。

妊娠とPAI-2の関連性

PAI-2は胎盤で分泌され、妊娠中のみ血中で検出可能なレベルに達します。特に妊娠中は血栓形成の傾向が高まるため、PAI-2がその一因である可能性があります。実際、PAI-2は妊娠期間中に血漿中で濃度が上昇し、最大で250 ng/mLに達することが知られています。この上昇は、主にグリコシル化形式で現れ、胎児および母体の組織のリモデリングに寄与しています。

PAI-2の構造と機能

PAI-2の構造は、他のセルピンと同様に、3つのβシートと9本のαヘリックスから成り立っています。その特異な構造に加え、PAI-2は単量体、多量体、中間体といった複数の状態を持ち、これらは環境の酸化還元状態によって変化します。特に、細胞質基質内では単量体型として存在することが多く、細胞分泌関連のオルガネラでは多量体化が進む傾向にあります。

モルフォロジーの変化は「loop-sheet」機構によって行われ、特にPAI-2がpolymerigenic formの際には、他の分子への挿入により多量化が進むことがあります。この過程は、PAI-2のジスルフィド結合により安定化され、機能に影響を与えます。

生理的役割

PAI-2の主な生理的な機能は線維素溶解の調整ですが、それがPAI-2の主要な役割かどうかは議論の余地があります。また、PAI-2は免疫応答の調節にも影響を与えており、特にマクロファージ内での発現が重要視されています。このタンパク質は、T細胞の反応を抑制する役割も果たし、感染や炎症に対処する際に関与しているとされています。

さらに、PAI-2を制御する遺伝子であるSERPINB2は、がん細胞と関係する研究でも注目されています。腫瘍細胞内でのPAI-2の高発現は、がんの成長に対する影響を与えることがあります。特に転移性脳腫瘍では、その高発現が腫瘍細胞の生存を助ける要因となりえると報告されています。

まとめ

プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター2は、血液の凝固や免疫応答に深い関わりを持つタンパク質です。特に妊娠中の役割は顕著で、胎児や母体における組織の調整に寄与します。その多様な機能と細胞内外での相互作用から、PAI-2の研究は今後ますます重要になることでしょう。

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